《ブラジル》10年後の日本祭りはどんな姿か? 問われる県人会の今後と母県の理解
総予算600万レ弱の巨大イベントに成長
ただし、ボランティアという尊い行為がこの巨大なイベントの根底を支えているため、深刻な後継者問題も抱えている。 谷口会長(81歳、2世)に今回の日本祭りの概要を尋ねると、会場運営を手伝うボランティア総数は5千人にもなるという。特に赤い法被を着た若者たちは、県人会とは関係なく関谷ロベルトさんの繋がりで集められた人たちだ。各県人会ブースには会員子弟を中心とその友人らが、それぞれ数十人手伝っている。谷口さんが会長をする和歌山県人会のボランティア総数だけで200人になるという。 同県人会では毎年、関西風お好み焼きを提供しており、昨年は4千枚を売り切った。「今年は5千枚を目指しています」というから、おそらく全県人会の中でも最も売り上げが多い会の一つだ。それだけ作るのには500玉のキャベツを千切りにする必要があり、会員が会館に集まって談笑しながら作業をするほか、一部は業者に依頼しているという。日本祭りの売り上げで年間活動費の半分を賄っている。 今日本祭りの総予算は600万レアル(約1億7500万円相当)弱だという。うち最大の経費は会場の賃貸料で約200万レアルと3分の1にもなる。入場料は前売りだと約30レアル、当日券だと約40レアル。総入場者は昨年で18万4千人だが、実際の有料入場者は10万人に満たないという。
それは60歳以上の女性、65歳以上の男性および、8歳以下の子供が無料であることに加え、公立学校生徒や教師や60歳から65歳までの半額入場者、政府支援を受ける関係で入場者の2割を無償で公立学校生徒や貧困家庭に配布することを義務付けられているからだ。 谷口さんは入場料一人当たりの平均単価は25レアルと見積もっており、仮に8万人が有料入場したとしても、200万レアルにしかならない。場所代程度だ。 県連役員はボランティアでこの巨大なプロジェクトに従事しているが、ブースの設営費用、ステージ費用、照明や音響設備などには膨大な諸経費がかかる。 入場料収入では足りない残りの400万レアルは、企業スポンサーのマスタークラスはブラデスコで24万レアル、それ以外の通常の企業スポンサーは5~10万レアルで30社弱、さらにキム・カタギリ連邦下議の50万レアルのような政治家の議員割当金やその助力、バザー業者からの出店料などで賄わなければならない。できるだけ各県人会からのブース出店代金は低く抑える必要があるからだ。 昨年の会計は残念ながら数万レアルの赤字で終わったという。「今年は黒字にする。赤字が続くのは良くない。そもそも全ての契約は会長の名前でサインをしているから、何かあったら個人でも責任を取る覚悟がないと会長はできない」と表情を引き締めた。