「D.P.―脱走兵追跡官―」原作者キム・ボトンの普通の中にある特別な物語の探し方
――韓国と日本のファッションの違いをどのように分析されていますか?
ボトン:韓国では流行を意識した服を選んでいるイメージがあります。個性よりもトレンドを押さえているかを大事にする。私が見た範囲では、日本ではトレンドを追うよりも自分が着たい服や似合うかどうかを大事にしている人が多いように感じますね。ブランドが好きだったり、流行に敏感な方ももちろんいると思いますが。
――今後、どのような作品を作りたいですか?
ボトン:特別なことは何も起こらないけれども、淡々とした日常の中の少しの変化と心の機微を描くことで、見た人の心を動かして、少しでも気づきや変化をさせるような作品をいつか作りたいですね。ヴィム・ヴェンダース(Wim Wenders)監督の「パーフェクトデイズ」 を見た時に、衝撃を受け「先を越された! 自分はこれから、どういうストーリーを作ったらいいんだろう」という思いに駆られました。
――平穏な日常にこそ幸福があると考えているのですね?
ボトン:少しだけ話がずれるかもしれませんが、中学生の時に自転車の事故で九死に一生の体験をしました。自転車に乗って家を出た瞬間から一切の記憶がないんのですが、目覚めたら病院のベットに寝ていて母親から手術を受けたと告げられました。その時に、「いきなり人生は終わってしまうことがあるんだ。自分が知らない間に生きているという状況は途切れてしまうんだ」と思ったことが影響しているのかもしれませんね。
北野監督の映画「あの夏、いちばん静かな海」からも影響を受けているかもしれません。何気ない風景や周囲を取り巻く環境から静かに醸し出されてくる雰囲気、些細な出来事やストーリーに惹かれます。事件や思いがけない出来事をあえて盛り込まなくても、人が生きている瞬間や風景などを描くだけで深い感動を与える作品が作れるはずです。そういう物語を作りたいですね。
TRANSLATION:HWANG RIE COOPERATION:HANKYOREH21,CINE21, CUON