甲子園ボウルの連覇が途絶えた関西学院大学、最後のキックを外した俺に、父親は「胸を張れ」と言った
蹴った瞬間「ちゃんと当たったな」
ともにオフェンスが決めきれず、0-0で第1クオーター(Q)を終えた。第2Qに入ってすぐ、関学にFGのチャンスがきた。スナッパーはQBの柴原颯斗(4年、啓明学院)、ホルダーはWRの坂口翼(4年、関西学院)。そして楯。4年間で数えきれないほど合わせてきた三人だが、公式戦で組むのはこれが初めて。楯は予想通り緊張したそうだが、31ydを蹴り込み、先制点を奪った。前半を10-10で終え、勝負の後半へ。第4Qに入ってすぐ、法政に勝ち越しのタッチダウン(TD)を許し、10-17となった。関学サイドにとってジリジリする展開の中、ようやく残り47秒で関学が1点差に追い上げるTD。楯がPATのキックを決めて追いついた。そのまま17-17で第4Q終了。甲子園ボウルへ進むチームを決めるため、タイブレーク方式の延長戦に入ることになった。 お互いにゴール前25ydからオフェンスをスタートし、点差がついた時点で終了だ。法政は1回表のオフェンスでTDを決められず、FGでの3点にとどまった。後攻の関学はランを3回続けて第4ダウン2ydとなった。同点のFGを狙い、楯がフィールドへ。するとキック直前に相手の反則があり、5yd罰退。再び関学オフェンスが出ていったが、3回のランで5ydしか進めず、また楯の出番となった。いつも通りボールから7ydのキック地点を歩測した。その直後に審判がボールを動かしたので、改めて歩測した。楯は極めて冷静だった。中央やや左からの23ydのFGだ。 「ちょっと斜めだな、ぐらいの感じで、試合の最初のFGに比べたらかなりリラックスして入れました。あとから動画を見たら、セットしたときに両手をプルプルさせてたし、いつもと何も変わらなかったですね」。楯がそう振り返る。相手の観客席からのクラウドノイズも、練習で対策済み。一切気にならなかった。 当たりはよかった。「蹴った瞬間、ちゃんと当たったなと思いました。でも顔を上げたら思ったより左にいってて。完全に外れたとも思わなかったですけど、Hポールのだいぶ上で、よく分からなかった。そしたら審判が前に出てきて……」。左のポールの下で見ていた審判が失敗のジェスチャーをした。延長は0-3で法政の勝ち。関学の2024年シーズンが終わった。