日本株取引の30分延長、相場の波乱助長に懸念の声-売買増加も幻想か
(ブルームバーグ): 東京証券取引所は11月5日から株式の取引時間を30分延長し、終値形成の透明化を目指す「クロージング・オークション」を新たに開始する。投資家の利便性向上が期待される半面、市場では相場の振幅拡大を懸念する声も上がる。
次期売買システム「アローヘッド4.0」の稼働に伴い現物株の取引時間を現在の午後3時から3時半まで延長し、最後の5分間は大引けでの売買執行をより円滑にするため、クロージング・オークションを導入する。
現在はザラ場から大引けの板寄せまで連続しているが、今後は午後3時25分にいったん終了し、その後は大引けの板寄せに向けた事前の注文受付時間(プレ・クロージング)となる。終値形成の透明化に加え、株価指数への連動を目指すパッシブ運用の拡大で大引け時の取引が増加傾向にある点も踏まえた措置だ。
1日の取引時間が5時間から5時間半、率にして10%長くなるため、東証の関係者は売買高の増加に期待感を示す。しかし市場関係者の間では、時間延長だけでは売買のボリュームは増えない可能性が警戒されている。2016年に取引時間を30分延長した韓国の事例があるためだ。
UBS証券の星直樹エレクトロニックトレーディング部長は、当時の韓国株式市場では「取引高、出来高には大きな変化は見られなかった」と指摘。当初は取引パターンに多少の変化が見られたが、3週間程度で元のさやに収まったと言う。
東証は11年11月に昼休みを30分短縮し、午前の取引時間を増やしたものの、事前の期待ほど売買高が伸びなかった経緯もある。こうした国内外の状況も踏まえ、投資家の間では時間延長の分、日中の取引がかえって分散され、流動性の低下で相場の振幅が拡大することへの警戒感も浮上している。
三菱UFJ信託銀行資産運用部の瀧山雅嗣シニアトレーダーは「寄り付き直後は結構値動きが荒いことが今もある。そういうことが増えてしまう懸念はある」と指摘した。