6000人の応募から、残ったのは18人だけ…アリババで日本事業のトップに上り詰めた日本人が明かす「グローバルに生き残るための思考法」
圧倒的にフェアな社風
あらゆる面でスピード感があり、苛烈な社内競争が繰り広げられているアリババ。大山さんによれば、その根底にはクオリティのみを評価する“圧倒的にフェアな社風”があるという。その表れの一つが職務グレード制だろう。アリババでは日本などのように「部長」「役員」といった重々しい役職名がつくことはない。 「仕事のクオリティに応じて、ひとりひとりが明確にランク分けされます。ランクは『P〇(数字)』と表記され、日本の役職と完全に一致はしませんがP3が新卒入社、P4~5 でアシスタント、P6がマネージャー、それ以降は、たとえばP8で部長クラス、P9,10で役員クラスと思ってもらえば良いでしょう。 評価もフェアで年功序列は全くない。KPIをどの程度達成したかという結果、仕事のクオリティにより昇進が決まります。それに上位のポストは本当に少ないですから、P8以降ともなると、とてつもなく優秀です。 余談ですが、アリババの等級は明確なので、中国企業に転職する際には非常に便利です。ヘッドハンターとコミュニケーションをとるときに『私はアリババでP〇でして』と言うと、おおよその実力がわかるので、話がスムーズに進みます。 アリババはこうした圧倒的にフェアな社風ゆえ、活躍している女性社員も多い。私の直属の上司もその上の上司も女性でした。クオリティのみが評価の対象となるため、女性の社員も男性の社員同様、ハードワークをしていましたよ」 「弱音を吐くのはやめるとき」アリババで生き残る人間とは アリババで勤め、3年がたったころ、ついに大山さんは、本社の部長クラスにあたるP8に昇進し、日本事業のトップに上り詰めた。自身のキャリアアップについて「非常に優秀な上司に恵まれたから」と謙遜するが、異国の大企業での活躍は並大抵の努力ではなしえないことだろう。
タフな上司たち
そんな大山さんは、アリババで生き抜き、勝ち残る人物にはどのような特徴があると感じているのだろうか。 「前提として、皆さんとにかく優秀でした。面接官を務めたこともあるのですが、応募してくる学生の中には、誰しも一度は耳にしたことがある、海外のトップ大学を卒業している子たちも当たり前にいました。 ただ、決して輝かしいバックグラウンドがあるからといって、アリババで活躍できるわけではない。生き残り、活躍するには粘り強く『ファイティングポーズを取り続けること』が求められる。私はそう思っています。 誰であれ、どこかで追い風が吹く瞬間はありますよね。そこまでめげずに、ファイティングポーズを取り続ける。上を目指して戦い続ける人が生き残っていました。 その点では、簡単に転職する文化がない、粘り強い日本人は意外とアリババに向いている気がするんですよね」 特に印象的だった社員はいたか。そう聞くと、大山さんは二人の上司を例に挙げた。 「一番尊敬していた元上司は、シングルマザーで、青島(チンタオ)にお子さんを預け、平日はアリババのある杭州に単身赴任して働くような生活をされていました。プライベートでも多々ご苦労があったはず。ですが、ハードワークの中でも、仕事で私生活の苦労を感じさせるような素振りは一切見せませんでした。 直属の上司のさらに上の上司もタフでしたね。仕事のため、一緒に日本にいったことがあります。共にタクシーで移動していると、彼女が座っている隣の席からなにやら、ぶつぶつと声が聞こえる。目を移すと語学アプリ使って、日本語やフランス語の勉強をしていました。 商談の合間に『休憩かな』と思っていると、今度は『ヒロ(大山さんの愛称)、皇居の周りを走るわよ!』と。食欲も旺盛だし、お酒もよく飲む。でも、飲んだ次の日も変わらず朝早くに起きて、仕事をしている。」 とはいえ、四六時中仕事や自身の成長ついて考え続ける生活は、息が詰まるのでは。 「弱音を吐くときはやめるとき。アリババで働く人の多くはそう考えていたと思います。それくらい、ハードワークと競争が激しく成長できる環境をエンジョイしている人が多かった。 それでも、アリババでは最終的に家族との時間を優先するために退職する人も少なくありませんでした。 ハードワークである分、アリババは他の企業に比べ報酬は高い。数年しっかり働いて、あとは家族との時間を大切にする、という道を選ぶ。私の上司もそうでした」