【NBA】昨シーズンに大躍進したペイサーズ、相手チームの『対策』にハイテンポなオフェンスを封じられて苦戦中
対策されても勝ち切るチームへと進化できるか
バランスアタックとプレータイムのシェアによるオフェンス中心のバスケを武器に、プレーオフでカンファレンスファイナルまで進んだペイサーズですが、今シーズンは9勝11敗と苦戦しています。原因はケガ人が多いチーム事情にもありますが、それだけでなく昨シーズンの躍進により相手チームがペイサーズ対策を準備してきていることも関係しています。 ペイサーズ最大の特長は得点力にありますが、昨シーズンはリーグトップ123.3だった得点が今シーズンは114.4と大きく落ち込んでいます。1試合当たりのフィールドゴールアテンプトが92.7から87.9と大幅に減ったことが響いていますが、その中でもマイボールになってから9秒以内に放つ3ポイントシュートのアテンプトが1.6本減っていることが目立っています。 スクリーンを使ってディフェンスにズレを作り、パスワークから積極的に3ポイントシュートを放ってくるのがペイサーズの特徴ですが、これを止めるために3ポイントラインの外でショウディフェンスしてパスの起点を潰しに行く。この対策を採用するチームが増えてきたことで、特徴が出にくくなっています。 また自分たちが失点した後、素早いリスタートからそのままトランジションに持ち込むのもペイサーズならではの戦い方でしたが、こちらもフルコートディフェンスでポイントガードへのパスを許さない対策も見られるようになりました。これらの対策により『肉を切らせて骨を断つ』ようなペイサーズならではのハイテンポな展開は出しづらくなり、オフェンス力勝負の試合が減ってしまっています。 昨シーズンのペイサーズは前半の得点が65.7、後半が65.5とほぼ同じ得点でしたが、得失点差を見ると前半の+0.3に対して後半は+2.8もありました。それは誰もが得点を奪えるバランスアタックと、プレーオフですら9人ローテとしたプレータイムシェアにより、ハイテンポな展開に持ち込めば『運動量と得点力で打ち勝てる』という戦略でした。 しかし、今シーズンはペースダウンを促されてしまい、その戦略が封じ込まれています。特に後半はフィールドゴール成功率がリーグトップの50.6%を記録する効率的なオフェンスができていながら、得点58.3、得失点差-0.7と昨シーズンのような強さを発揮できていません。 スコアリング能力の高いスター選手を揃えるのではなく、タイリース・ハリバートンのパス能力を中心にバランスアタックでリーグトップの得点能力を実現。しかも、ディフェンスの重要性が高まると言われるプレーオフですら、得点力で勝ち切る戦略を作り上げたのは見事としか言いようがありません。しかし、プレーオフで勝ったからこそ対策が施され、思うように勝てない今シーズンになってしまっています。 悪いことばかりではなく、今シーズンは3年目のベネディクト・マサリンがチーム2位の得点を記録すれば、2年目のジェレス・ウォーカーはチームトップの1.4スティールを記録するなど個人の成長は見られます。ただし、相手チームに対策されても勝ち切るチームへと進化する必要があります。