3大会連続メダルとなる銀獲得も…なぜ卓球女子団体は中国に歯が立たなかったのか…パリ五輪へ向けて必要なこと
リオ五輪の団体戦を制している劉は30歳で、一方でジュニアの世界女王になった王は22歳。孫とともに次代のエースと期待される王に、3年後のパリ五輪をも見すえて経験を積ませながら、中国は団体戦で4連覇を達成したことになる。 加えて、伊藤と対戦する第4試合のシングルスに出場予定だった27歳の陳も、松下氏は「3年後のパリ五輪には、おそらく出てこないと思います」と予想している。 「伸び盛りの若手選手が大勢いる中国はそれだけ選手層が厚い。劉選手が王選手に代わったことで、東京五輪の団体戦も初めて五輪に出る3人で4試合をすべてストレートで制したわけですからね。ひとつの国がこれほど長くトップを保っている競技は他にないし、中国としても銀メダルでは国内世論から叩かれるほどの重圧のなかで、ナショナルチームに関わる全員が必死に、それこそ忖度も何もないような状態で戦っています」 団体戦における王の起用法ひとつを取ってみても、中国が卓球王国を築きあげ、これからも君臨していく理由が伝わってくる。3年後のパリ五輪を含めて、厚さを増す牙城に日本が風穴を開けられる瞬間は訪れるのか。東京五輪と同じく女子団体が銀メダルを獲得した、9年前のロンドン五輪と比べながら松下氏が指摘する。 「ロンドンの銀と東京の銀は違います。ロンドンでは中国が抜きん出た状態で、中国以外の国々を勝ち抜いての銀でしたけど、今回は実力的に銅メダル以下とはレベルの差があります。中国から下がった位置に日本がいて、さらに下がったところに3位以下がいる状態ですが、一番怖いのは現状で金、銀、銅のメダルを取ったことで、これまでの日本のやり方が正しかったと思うこと。満足してしまうと、中国には勝てないでしょう。 いまいる選手がさらに頑張らなければいけないし、割り込んでくるような選手も出て来ないといけない。中国は東京五輪のナショナルチームに対して、100人規模の練習パートナーを派遣するなど、卓球界を挙げて頂点に立つ努力を重ねてきました。日本もナショナルチームとTリーグや各所属チームを含めたすべての関係者が、妥協などをいっさい排除しながら同じベクトルを描き、切磋琢磨していかなければいけないと思っています」 伊藤は悔しさを糧に、卓球台に近い位置から強打を連発する稀有なスタイルをスタンダードにする努力を積み重ねていくだろう。同じ2000年生まれの平野、そして今回はリザーブだった同世代の早田ひな(21・日本生命)と特に女子にはホープたちが続く。男子も若きエース、張本智和(18・木下グループ)が成長を遂げている。 テレビ越しに東京五輪に魅せられた子どもたちも、後に続きたいと思い立つだろう。選手たちの頑張りで手にした3つのメダルを未来へつなげ、真の意味での打倒・中国を成就させるためには、日本卓球界に関わる全員が共有する「志の高さ」が問われてくる。 (文責・藤江直人/スポーツライター)