3大会連続メダルとなる銀獲得も…なぜ卓球女子団体は中国に歯が立たなかったのか…パリ五輪へ向けて必要なこと
まずダブルスを取って重圧をかけ、伊藤でさらにたたみ掛け、たとえ第3試合を落としたとしても伊藤が臨む第4試合のシングルスで締める――が日本の戦略だった。 一転して流れを日本へ引き寄せる役割を託された伊藤も、第3ゲームでサービスのコースや長さを変えて主導権を握ったが、第4ゲームですぐに孫に対応された。再び試合中の修正力が際立ったが、松下氏は「違う見方をすると」として、こう続けた。 「伊藤選手のなかで戦い方が最後までまとまっていなかった。なので一過性の、ちょっと厳しい言い方をすれば、その場しのぎのものを繰り出して第3ゲームを取った形になりました。事前に戦い方が決まっていれば、孫選手の弱点などを徹底的に攻めて主導権を握る展開になりますけど、現状のままでは勝てない、何が相手に対して有効なのかを模索しているような状況での第3ゲームだったので、その後は続きませんでした」 追い詰められた状況で迎えた第3試合では、平野が王にストレート負けを喫して勝負がついた。ここで見過ごせないのは、王はもともと団体戦のリザーブで、1回戦がスタートする直前に世界ランキング7位の劉詩ブンと交代していた点となる。 団体戦では3人の代表選手に故障などのトラブルが発生した場合にリザーブと入れ替えられるルールとなっている。直近の世界大会となる、2019年の世界卓球選手権の女子シングルスを制した劉の状態に関して詳細は発表されていない。ただ、混合ダブルス決勝で日本ペアに負けている点が関係しているのではないかと松下氏は推察する。 「金メダルを逃して気落ちしている選手を起用するのはリスクがあるという点と、もうひとつは今後を見すえていまが伸び盛りであり、タイトルに対してハングリーでモチベーションも高い王選手が、プレッシャーのかかる五輪でどれだけ戦えるのかを計りたい、という狙いもあったのかもしれない。劉選手に関してはタイトルもすべて獲っているし、これからの国際大会ではおそらく起用されないと思っています」