【総括:2024】中国は「ラグジュアリー失速」「AI制作コンテンツ」「越境EC新兵器」「POPMART株の爆騰」
ところが12月、アリババはインタイムを売却した。インタイムの業績は非公開で経営状況は明らかになっていないが、取得費用の半額以下となる74億元(約1590億円)で売却したことを考えると、厳しい状況に置かれていたことは間違いなさそうだ。
ただし、売却の理由はアリババの戦略転換にある。小売業を革新する「新小売」を断念し、祖業のECに集約する方針を打ち出している。今年3月には中小店舗向けのB2Bプラットフォーム「LST」も停止。スーパーチェーンのフーマーフレッシュやサンアートも売却対象と噂されている。
コロナの流行や中国経済の低迷といった外部環境の変化があるとはいえ、デジタル技術で既存産業が変革する、壮大な未来図を描いたアリババの大戦略が静かに終焉を迎えたことには一抹の寂しさも禁じ得ない。
「TEMU」などの中国越境EC、新トレンドは「海外倉庫」
中国発の越境ECプラットフォームといえば、「普通のネットショッピングよりも配送時間がかかるがともかく安い」がこれまでの相場だったのだが、状況が変わりはじめている。大手越境ECプラットフォームの「TEMU」を見ると、一部の商品には「国内配送」のタグがついており、最短で1営業日で配送される。
よりスピーディーに配送するために海外倉庫に在庫を置くトレンドが広がっているのだ。今年6月には中国政府は「越境EC輸出開拓に関する海外倉庫建設推進に関する意見」という政策文書を発表し、海外倉庫の拡充を国としても推進している。越境ECとは異なり関税を支払う必要はあるものの、スピーディーに配送できるのが強みだ。また、郵便や宅配便では扱えない家具やマッサージ椅子などの大型商品も扱うことができる。
中国国営テレビ局CCTVの今年9月の報道によると、すでに全世界に2500以上もの海外倉庫が運用されている。プラットフォーム企業が倉庫を持つケースもあれば、メーカーが独自に倉庫を持つケースもあるという。報道ではショベルカーやロードローラーなどを製造する重機メーカーまでもが、海外倉庫を使った越境ECに取り組んでいることが紹介されている。