なぜ高級車は「数千万円」もするのか? 製造工程から見る、一般車との決定的な違いとは?
高級車製造にかかる膨大な時間
車の価格における違いは、手間や時間のかけ方によるものが大きい。では、実際に車を製造するためにかかる時間にはどのような差があるのだろうか。 一般的な車では、プレスから溶接、組み立て、検査までにかかる時間は、トヨタや三菱で17~18時間、日産では24時間程度だ。これは部品作りの時間を除いたものであり、工場や生産台数によっても異なるが、基本的には1日以内で完了する。 一方で、ロールス・ロイスのような高級車は、製造に約800時間、つまり1か月以上かかる。これは数千万円の価格帯の車に見られる特徴だ(2022年12月14日、『WEB CARTOP』)。 センチュリーも数千万円の高級車に該当するが、製造には「タクト(1工程の所要時間)」が量産車の秒単位に対し、5時間といったデータもある(2023年12月11日、『ニュースイッチ』)。 高級車の製造には、えりすぐりのスタッフ、いわゆる「選抜隊」が携わり、細心の注意を払って検査まで行う。これらのスタッフは高度な訓練を受け、豊富な経験を持つため、当然ながらその人件費も車の価格に反映される。 加えて、高級車の場合、生産量が少ないため、製造環境を維持するためにも車の価格は高めに設定せざるを得ない。
静粛性と走行性能の極み
高級車は、使用される素材の品質の高さでも知られている。一方で、一般的な車では、内装に合皮やむき出しの樹脂パーツが使われることが多い。 高級車では、こうした樹脂パーツを隠すように、100%ウール、最高級レザー、木材、カーボン、スチールなどが使用される。また、特注の手彫りや刺しゅう、天井に星空のような装飾が施されることもある。 シートにはヒーターやマッサージ機能が備わり、ユーザーの好みに合わせたシート位置を登録することができるなど、ハイテク機能も充実している。さらに、高級オーディオシステムや大きなモニター、左右独立のエアコン温度設定など、豪華な装備がそろっている。 エンジン性能も高く、高回転が必要ないため、静音性にも優れており、車内での会話がしやすい環境を提供している。振動が少なく、スムーズに進む乗り心地が魅力的だ。 最も重要なのは、安全性の高さだ。高いステアリング性能により安定した運転が可能で、ボディ剛性も強固であり、あらゆる安全装備が充実している。 車に特に興味がない人でも、高級車の特長を知ることで、その魅力に引き込まれることだろう。
古宮宗(フリーライター)