「私、病院キライなんです」と言う女医が「病院らしくない医院」で行う”オープンな認知症診療”
「もの忘れ外来」での認知症診察の流れ
東田:認知症に関しては今、予約が必要なのですか。 白土:予約を入れられないグループの人がいて、認知症があったり、キャラクター的に予約ができない人がいたりするので、予約なしで直接来られても診ています。そのため、30分5人枠(通常診療)のうち4枠までは予約が入れられる人に使って、残り1枠は予約を入れられない人のためにとってあります。そういう人が当日来られたら、そこへ入れるためです。予約を入れたけれども待合室で待てない認知症の方は、待たなくてもいいように入れ替えます。予約を入れられない、予約を覚えられない人も、弾かないようにしています。 東田:30分5人枠というのは、何曜日にそうされているのですか。 白土:毎日それです。患者さん中心にやっていると急変とかもあって、だんだんずれちゃったりはしますけどね。 東田:初診のときの注意点、たとえば、あれを持ってきてくださいっていうのはありますか。使っている薬とか既往歴(きおうれき)とか、家族の状況とか。問診票とかは使われますか。 白土:今日はどうされましたか、くらいの軽い問診票はつくってあります。初めていらしたときではなく、2回目にいらしたときに30~40分かけてじっくりお話を伺うのが通常パターンなので。お薬手帳などは、あるに越したことはないですけど、紹介状に関しては持って来られないという事情の方も多いのでマスト(必須)ではないです。それ以降は普通の診察に合流します。 初診は、皆さん直(じか)に来られたり、予約を取って来られたりとか、そのとき本当に困っている場合には、先に穏やかにするお薬を出しちゃいましょうか、となりますけど、本番は2回目です。予約を取っていただいて。 東田:普通、認知症の方って、ご家族と一緒に来られることが多いですよね。そうすると、「どうしました?」って尋ねたとき、本人が上手にしゃべれるならばいいですけど、そうでもない場合は、ご家族が病状を話しますよね。本人と家族と、どういうバランスで質問をなさいますか。 白土:そのままにしていると、どうしてもご家族だけがしゃべる形になってしまうので、私は最初と最後は絶対にご本人のお話を伺うようにしています。診察室に座った瞬間に、ご家族がしゃべり出してしまうことが多いので「ちょっと待ってください、今、どう思っていますか、今、どういう調子ですか」など、最初はご本人からと決めています。話が薬のことなどで込み入ってきてしまうと、ご家族族中心に話すことになるので、最後にご本人に向けて、今、ご家族と話した内容を、「こんなふうにお薬を調節しようと思うけどどうですか」とか「デイサービスという話も出ていますがどうですか」とフィードバックしながら話します。 東田:ご家族の中にはいわゆる問題行動、本人がBPSDを起こしているというエピソードをずっと語られる方がいますよね。そういうお話をご本人の前で聞きますか。 白土:聞いちゃっていますね。でも、ご本人がものすごく怒ってしまうケースもあるので、本人の前では話したくないというご家族には、メモを書いてきていただいたり、ご本人が診察室に入られる前とか、診察が終わったあとに残って話を聞いたりもします。ただ、全部別室にしてしまうと、外来が回らなくなってしまうので、問題がなければ一緒にお話を聞くことが多いですね。 後編記事では、白土医師の認知症診療についての考え方にさらに具体的に迫っていきたい。 後編〈茨城の女医が考案した認知症「改善のためにできることリスト」を詳細初公開。薬なしでも認知機能はよくなる!〉へ続く。
東田 勉(フリーライター・編集者)