岸田首相の「酷暑乗り切り緊急支援」、東京都区部CPIへの効果が判明【解説:エコノミスト宅森昭吉氏】
8月と比較し、9月の「物価見通し」は落ち着きをみせる
9月の「消費者マインドアンケート調査」は、8月から大きく変化しました。 内閣府の「消費者マインドアンケート調査」は16年9月から実施されている、誰でも自ら参加し回答できるユニークな調査です。毎月20日締め切りで、結果の公表時期が当該月の22日~25日頃と早く、消費者マインドの基調変化を的確に把握できます。9月調査は3連休の影響で、9月25日と遅めの日程で公表されました。 質問は「暮らし向き(半年後)」と「物価上昇(1年後)」の2問です。「良」「上昇」から「悪」「低下」の5つの選択肢から回答します。「景気ウォッチャー調査」と同じ5段階評価なので、1から0まで、0.25刻みで点数を割り振り、加重平均してDIを算出することができます。50が判断の分岐点です。 物価上昇判断DIは、調査開始から22年1月までは60台・70台で安定推移していましたが、ロシアがウクライナ侵攻した月の22年2月調査以降80台・90台と物価が上昇するという見通しが強まっていました。24年は高水準ながらも落ち着き傾向で、2月以降は7月82.6まで80台前半でしたが、8月は88.3と5.7ポイント上昇と大きく変化しました。 政府の電気代・ガス代への補助金が一旦終了したことや、新米が出回る前に不足気味の状況が生じコメの価格が上昇したなどの身近なものの価格上昇が影響したと思います。 9月の物価上昇判断DIは80.3とまだ80台ながら、8ポイントも低下しました。円高が進んだことや、9月支払い分から「酷暑乗り切り緊急支援」として政府の電気代・ガス代への補助金が復活したことなどが影響したと思われます。ロシアのウクライナ侵攻前の22年1月の79.5以来の低い水準になりました。 暮らし向き判断DIの16年9月から24年9月の全調査期間平均は36.8、最高は17年1月48.9、最低はコロナ禍の20年4月20.7です。24年8月は33.8と平均的水準を下回っていましたが、9月は41.0で8月から7.2ポイント上昇し、平均的水準を上回りました。 暮らし向き判断DIと物価上昇判断DIの相関係数は16年9月から21年8月までの5年間では相関係数が0.01と無相関でしたが、その後の3年1ヵ月間(21年9月~24年9月)では、相関係数は▲0.75と逆相関の関係です。24年8月では、高めの物価見通しが暮らし向き判断の足枷になり、逆に9月は物価見通しの安定化が暮らし向き判断の改善をもたらしました。 ※なお、本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。 宅森 昭吉(景気探検家・エコノミスト) 三井銀行で東京支店勤務後エコノミスト業務。さくら証券発足時にチーフエコノミスト。さくら投信投資顧問、三井住友アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメントでもチーフエコノミスト。23年4月からフリー。景気探検家として活動。現在、ESPフォーキャスト調査委員会委員等。
宅森 昭吉