岸田首相の「酷暑乗り切り緊急支援」、東京都区部CPIへの効果が判明【解説:エコノミスト宅森昭吉氏】
“景気の予告信号灯となる身近なデータ”として、総務省や内閣府が公表している「統計データ」が挙げられます。本稿では、エコノミスト・宅森昭吉氏が、9月末時点での物価の推移と消費者の生活の変化について、9月27日に公表された「東京都区部消費者物価指数・9月中旬速報値」などの統計データから紐解いていきます。 【早見表】毎月1万円を積み立て「預金」と「NISA」を比較…5年~40年でどれくらい差がつくか
総務省公表の、身近な物価動向を早期に把握できる統計
消費者物価の動向を早期に把握できる便利な統計が、総務省が公表している「東京都区部消費者物価指数・中旬速報値」です。「全国消費者物価指数」に先立ち1ヵ月弱早く、先行指標として東京都区部(中旬時点)のみの結果を速報として公表するものです。9月分が9月27日に発表されました。 9月の東京都区部消費者物価指数・総合・前年同月比は8月の+2.6%から+2.2%に0.4ポイント伸び率が高まりました。なお、東京都では24年度から高校の授業料助成の所得制限を撤廃し実質無償化した影響で、東京都区部の前年同月比の方が、全国に比べ低い状況にあります。教育授業料等は前年同月比▲15.3%で、内訳の高等学校授業料(私立)は同▲61.7%となっています。 9月の生鮮食品は前年同月比+6.7%と8月の+7.9%から上昇率が1.2ポイント鈍化し、前年同月比寄与度差は▲0.03%の低下要因になりました。トマトは前年同月比+12.7%と高めでしたが、生鮮食品全体では8月から上昇率はやや鈍化しました。 9月のエネルギーの前年同月比は+9.5%と8月の+17.4%から上昇率が鈍化し、寄与度差は▲0.39%の低下要因になりました。総務省によれば「酷暑乗り切り緊急支援」による押し下げ効果(寄与度)は▲0.51%[試算値](内訳:電気代は▲0.35%[試算値]、都市ガス代は▲0.16%[試算値]ということです。 9月では、生鮮食品を除く食料の前年同月比+2.8%の上昇要因になりました。9月はうるち米(コシヒカリを除く)の前年同月比+42.0%と8月の+28.2%から大幅に上昇しました。9月の牛肉(輸入品)は同+14.7%、チョコレートは同+11.5%と2ケタの上昇率になりました。 9月の宿泊料は前年同月比+6.8%、外国パック旅行費は前年同月比+65.3%でした。 9月生鮮食品を除く総合・前年同月比は+2.0%上昇と8月の+2.4%から0.4ポイント伸び率が鈍化しました。9月の生鮮食品とエネルギーを除く消費者物価指数・総合・前年同月比は+1.6%と、8月+1.6%と同じ伸び率になりました。 なお、卸売価格の上昇の影響が報道されることが多い鶏卵ですが、9月東京都区部消費者物価指数での鶏卵は2020年を100とした指数で122.8、前月比▲1.0%、前年同月比▲11.2%となっています。