岸田首相の「酷暑乗り切り緊急支援」、東京都区部CPIへの効果が判明【解説:エコノミスト宅森昭吉氏】
エネルギー価格の高騰がようやく沈静化?
9月上旬貿易統計で入着原油価格(原粗油)は77,604円/klと8月下旬までの8万円台から24年4月上旬79,968円/kl(当初発表値)以来の7万円台に低下しました。ドル建ての原油価格がWTIでみて9月は1バレル=70ドル前後で安定推移し、ドル円レートが一時期から見て円高方向に進んだことが背景です。入着原油価格の前年同月比は4月から8月までは2ケタの上昇率でしたが、9月上旬前年比は+0.5%に鈍化しました。 23年は9月中旬から12月下旬まで、1klあたり8万円台だったので、9月上旬の価格水準を考慮すると、24年中は9月中旬以降年末まで入着原油価格が前年比マイナスで推移する可能性が大きいと思われます。エネルギー価格の高騰が長らく日本経済に影響をおよぼしてきましたが、ようやく沈静化してきたように思われます。
8月・9月の「実質賃金」は?
7月の毎月勤労統計では、ボーナスなど特別に支払われた給与の伸び率が前年同月比は+6.6%と6月の同+7.8%に続き高く、7月の実質賃金(現金給与総額)は前年同月比+0.3%と2ヵ月連続プラスとなった。しかし、きまって支給する給与の実質賃金は前年同月比▲1.0%と30ヵ月連続前年同月比マイナスです。 特別に支払われた給与プラス効果が小さくなり、デフレーターの消費者物価指数・持家の帰属家賃を除く総合の前年同月比が+3.5%に上昇することがわかっている8月分では、一旦、実質賃金(現金給与総額)は前年同月比マイナスに転じそうです。しかし、東京都区部消費者物価指数・持家の帰属家賃を除く総合の前年同月比は+2.5%で8月の+3.1%から0.6ポイント鈍化しています。 「酷暑乗り切り緊急支援」による押し下げ効果が出てデフレーターの全国消費者物価指数・持家の帰属家賃を除く総合の前年同月比も鈍化が見込まれる9月では、実質賃金(きまって支給する給与)が32ヵ月ぶりにプラスに転じ、全体ベースの実質賃金(現金給与総額)もプラスに転じる可能性があると思われ、要注目です。