【有馬記念Special】ドウデュースは〝幻の馬〟イクイノックスと戦っているのか
ドウデュースが北海道安平町のノーザンファームで誕生したのは2019年5月7日。その数年前だったと記憶している。7月に苫小牧市のノーザンホースパークで開かれる、国内最大の競走馬競り市、セレクトセールでノーザンファームの吉田勝己代表がこう話していた。
「みんなはディープインパクト(の産駒)ばかりを競り合っているけど、ハーツクライも素晴らしい産駒が多い。ディープの半分くらいの値段で同じように活躍できるんだから、私ならハーツを勧めるね」
その言葉が正しかったことを産駒たちが実証した。17年にシュヴァルグランがジャパンCを制すると、セレクトセールで外国人馬主が競り落としたヨシダが18年に米GⅠを2勝。同年のエリザベス女王杯を制したリスグラシューは翌19年の宝塚記念、オーストラリアのコックスプレート、有馬記念でGⅠ3連勝を果たし、同年のジャパンCではスワーヴリチャートが優勝した。
こうした偉大な先輩たちに続く形で生まれたのがドウデュースだった。朝日杯フューチュリティSには、武豊の手綱で初陣を勝利で飾った若駒が3頭いた。アルナシーム、ドーブネ、ドウデュース。千葉サラブレッドセール(2歳)で、藤田晋オーナーに4億7010万円(消費税抜き)で落札された弟・武幸四郎厩舎のドーブネとドウデュースのどちらを選ぶか悩むのではないかと勝手に想像していたが、主戦騎手に迷いはなかった。ドウデュースを所有するキーファーズの代表を務める松島正昭オーナーと親しかったこともあるだろうが、2戦で高い将来性を感じ取っていたようだ。
武豊に初の朝日杯フューチュリティS勝ちをプレゼントしたドウデュースは、翌年の日本ダービーを制した。道中は後ろから数えて5番手を進み、勝負どころで外へ。そのままスムーズに直線外から鋭い末脚を発揮させると、さらに外から伸びてきたイクイノックスの追撃を抑えて栄光のゴールに飛び込んだ。2分21秒9のレースレコードで6度目のダービージョッキーとなった武豊は「格別のうれしさですね。僕自身、ダービーの景色は久しぶり(キズナで制した13年以来9年ぶり)。やっぱり最高です。これほど幸せな瞬間はないですね」と喜びに浸った。