「トランプ外交」が生み出す対立と緊張 2019年国際ニュース振り返り
(10)トランプ大統領への弾劾手続き開始
10月31日、アメリカ議会下院はトランプ大統領に対する弾劾のための調査を開始することを可決。アメリカで大統領に対する弾劾手続きがとられるのは、1998年のクリントン大統領(当時)に対するもの以来です。 トランプ氏への弾劾調査は、オバマ政権時代に副大統領も務めたバイデン氏も絡んだ「ウクライナ疑惑」が発端となりました。バイデン氏は2020年大統領選挙での民主党の候補指名レースで最も有力といわれます。ウクライナ疑惑とは、そのバイデン氏に不利な証拠を集めるため、バイデン氏の親族がオバマ政権時代にウクライナで不正行為に関わったことを調査するよう、トランプ大統領がウクライナ政府に軍事援助と引き換えに求めたという疑惑です。 民主党が多数派の下院と異なり、上院では共和党が過半数を握っているため、この弾劾が成功する見込みはほとんどありません。ただし、弾劾の結果にかかわらず、その行方が2020年大統領選挙に影響することは確かといえるでしょう。
----------------------------------- ■六辻彰二(むつじ・しょうじ) 国際政治学者。博士(国際関係)。アフリカをメインフィールドに、幅広く国際政治を分析。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、東京女子大学などで教鞭をとる。著書に『世界の独裁者』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、『対立からわかる! 最新世界情勢』(成美堂出版)。その他、論文多数。Yahoo!ニュース個人オーサー