「トランプ外交」が生み出す対立と緊張 2019年国際ニュース振り返り
(6)香港デモの長期化
11月20日、香港警察はデモ隊の拠点になっていた香港理工大学を制圧したと発表。香港でのデモは、政治犯を中国本土に引き渡すことを可能にする条例案の審議をきっかけに3月から広がりましたが、理工大学の制圧によってひと段落ついたのです。ただし、その後11月24日に行われた香港区議会選挙では、中国に批判的な民主派が大勝するなど、香港情勢は今後も予断を許しません。 高まる緊張は、海外にも飛び火しています。長引くデモに中国政府はテロ対策などを専門とする人民武装警察を香港との境界近くに派遣するなど、軍事的な圧力も加えてきました。これに対して、欧米諸国からは人権侵害への批判が噴出し、中でもアメリカ議会は11月20日、香港デモ隊を支持する法律(香港人権・民主主義法)を可決しました。一方、中国も香港で活動するアメリカの人権NGOへの規制を強めるなど、海外からの干渉を拒絶する方針を鮮明にしました。こうして、香港デモは米中の覇権争いの一部にもなったのです。
(7)アマゾン火災
ブラジルの国立宇宙研究所のデータベースによると、12月30日段階でブラジルの熱帯雨林では例年より約48%多い19万7487件以上の火事が発生し、その面積が約9060平方キロに広がっていると発表。熱帯雨林が広がるアマゾンは「地球の肺」とも呼ばれます。折しも地球温暖化対策を求めるスウェーデンの16歳グレタ・トゥーンベリさんの活動が知られ始めたこともあり、環境問題への関心が再び高まるなか、山火事でアマゾンの森林が失われることに対する危機感が世界的に広がったのです。 アマゾン火災には人災の側面が大きくあります。アマゾンではもともと農地確保のために野焼きすることが一般的でしたが、森林保護のための規制も強化されていました。しかし、農業振興を掲げる現在のブラジル・ボルソナロ大統領が1月に就任して以来、規制は緩和されて野焼きは拡大。そのため、早期の鎮火を求める海外からの要求に対して、ボルソナロ大統領の反応は積極的とはいえず、アマゾン火災は現在も続いています。