「トランプ外交」が生み出す対立と緊張 2019年国際ニュース振り返り
(4)IS指導者バグダディ容疑者の死亡
10月27日、トランプ大統領はアメリカ軍がイスラム過激派「イスラム国」(IS)の指導者アル・バグダディ容疑者をシリアで殺害したと発表。「世界はより安全な場所になった」とアメリカ軍の戦果を強調しました。 2014年にISが「建国」を宣言して以来、バグダディ容疑者はこれまでに何度も死亡説が流れ、そのたびにISが否定してきました。しかし、ISがこれを認めたことで、バグダディ容疑者の死亡が確実なものになったのです。ISを率いたバグダディ容疑者の死は、組織の求心力の低下に拍車をかけるものとみられます。 ただし、ISはすでに各地で小規模のグループごとにバラバラに活動しています。そうした活動はバグダディ容疑者が死亡した後も続いており、例えばイラク北部の山岳地帯に潜伏するグループは、イラクの政治情勢の混迷に付け込んで勢力を広げているといわれます。そのため、バグダディ容疑者が死亡しても、ISによるテロがなくなることは想定できないのです。
(5)混迷のブレグジット
5月24日、イギリスのメイ首相が辞任を表明。メイ首相は2018年、EU(欧州連合)との間で離脱に関する合意に達していました。ところが、メイ首相とEUの合意内容は、イギリス議会の離脱派、残留派のいずれの支持も得られず、政治運営が行き詰まった果ての辞任でした。 メイ首相の後任として就任したジョンソン首相は、EU離脱を推進してきた中心人物の一人。そのジョンソン首相がEUとの間で取りまとめた合意への賛否を問う形で12月12日に実施された総選挙では、離脱を推進する保守党が大勝。国内の混乱が長引く状況に幻滅したイギリスの有権者が事態の決着を優先させたことが、この選挙結果を生んだといえます。 これによって「合意なき離脱」という最悪の事態は回避され、2020年1月末のEU離脱がほぼ確実となりました。しかし、その直後の12月19日、EU残留を求め続けてきたスコットランド議会は、分離独立を問う住民投票を再度行うようイギリス政府に要求。EU離脱に目途が立ったことは、結果的にイギリスに新たな分裂も生んだといえるでしょう。