「トランプ外交」が生み出す対立と緊張 2019年国際ニュース振り返り
(2)イラン制裁で加熱する中東の対立
6月24日、トランプ大統領はイランの最高指導者ハメネイ師らの資産凍結といった制裁を発動しました。6月20日にペルシャ湾ホルムズ海峡でアメリカ軍の無人偵察機機が撃墜されたことなどを受けての措置でした。 トランプ氏が2018年5月に「イラン核合意」(2015年)からの離脱を決定した後、今年5月には米海軍の空母エイブラハム・リンカーンをペルシャ湾に派遣するなど、イランとの緊張が高まっていました。アメリカによる制裁の強化に、もともとイランと対立していたサウジアラビアなどアラブ諸国も呼応して、ペルシャ湾一帯での警備活動を強化し始めました。 これに対して、イランはウラン濃縮を再開。11月には、核合意で禁止されていた中部フォルドウの地下原子力施設での作業や、3.67%を超えるウラン濃縮を実施するに至りました。対立の余波は地域一帯に波及しており、9月14日にはイランが支援するイエメンの武装組織フーシ派は、サウジアラビアの石油施設をドローンで攻撃。世界の原油流通への懸念も高まりました。イランはロシアや中国との関係も深いため、中東での対立の激化は世界全体の力関係にも影響を及ぼすとみられています。
(3)米朝協議の難航
6月30日、トランプ大統領は韓国と北朝鮮の軍事境界線にある板門店で金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長と会談。その前日の29日、G20出席のために訪日していたトランプ大統領がTwitterで予告し、これに金委員長が応じて実現した、電撃的な会談でした。しかし、華々しい外交演出とは裏腹に、非核化と制裁解除をめぐる米朝協議はその後も停滞したままです。 北朝鮮は交渉期限を一方的に「2019年末まで」と区切っています。これは2020年アメリカ大統領選挙を目前にして、成果を出したいトランプ大統領から譲歩を引き出すための手段とみられます。その上、期限が迫った11月末以降、北朝鮮はミサイル実験を繰り返し、圧力を強めてきました。 これに対して、トランプ大統領は制裁解除には応じていないものの、強硬派ボルトン補佐官を罷免し、北朝鮮による短距離ミサイルの発射実験を不問に付すなど、融和姿勢を維持してきました。北朝鮮が年末に向けて「クリスマスプレゼント」を贈ると予告したことにも、「ミサイルではなく花瓶かもしれない」と、大きな問題ではないとアピールしています。その行方は予断を許しませんが、2020年以降に仕切り直したとしても、米朝協議が簡単に進まないことは確かといえるでしょう。