考察『光る君へ』30話 晴明(ユースケ・サンタマリア)「いま、あなたさまの御心に浮かんでいる人に会いに行かれませ」道長(柄本佑)動いた、ついに来るか「いづれの御時にか」!
大河ドラマ『光る君へ』 (NHK/日曜夜8:00~)。舞台は平安時代、主人公は『源氏物語」の作者・紫式部。1000年前を生きた女性の手によって光る君=光源氏の物語はどう紡がれていったのか。決死の雨乞いから始まった30話「つながる言の葉」では、ついに「面白い物語を書く女」としてまひろ(後の紫式部/吉高由里子)の名前が上がります。いよいよ『源氏物語』誕生か。ドラマを愛するつぶやき人・ぬえさんと、絵師・南天さんが各話を毎週考察する大好評連載32回(特別編2回を含む)です。
安倍晴明83歳
寛弘元年(1004年)7月。干ばつが都を襲い、わずかな水を巡り人々が争う。猛暑に苛まれ、虚ろな目で降雨を待つ民衆と、汗をぬぐう実資(秋山竜次)、道綱(上地雄輔)。テレビのこちら側の我々も猛暑の真っただ中にいるので共感してしまう。 一条帝(塩野瑛久)おん自らの雨乞いも陰陽寮の祈祷も功を奏さず、道長(柄本佑)は現役を退いた安倍晴明(ユースケ・サンタマリア)に雨乞いの儀式を依頼した。 「雨乞いなど体がもちませぬ」 寛弘元年、安倍晴明83歳。そりゃ断られますって! 炎天下でおじいちゃんに無理させないで! 「何をくださいますか」 「私の寿命を10年やろう」 「まことに奪いますぞ?」 「構わぬ」 安倍晴明は、道長がどんな犠牲を払うか、常にそれを問う。国を率いる者としての覚悟が見えたとき力になってくれるのだ。そして行われる雨乞い──朗々と響く声と、剣をかざしての神秘的な儀式、五龍祭。 昭和を生きた漫画好きなので、雨乞いといえば『日出処の天子』(山岸凉子)の厩戸王子という人間である。しかし、これからはそれに『光る君へ』の安倍晴明を加えよう。そう言いたくなるほど、ユースケ・サンタマリアがよい。 14回でも述べたが、このドラマでは、呪術については「そうかもしれないし、そうではないかもしれない」という見せ方を徹底している。 雨はいずれ必ず降るのだから、降るまで祈れば祈祷の効果があったように見える。降雨まで儀式を続けられる体力がなければそれまでだ。 しかし、倒れて雨に打たれる晴明、彼の隣で泣く須麻流(DAIKI)のふたりの姿を見たからには、死力を尽して見事に龍神を都の上空に招き、雨を降らせたのだと思いたい。