「横浜」という名字、実はルーツは横浜市ではありません。では、どこでしょうか?
横浜(よこはま)
名字のルーツは地名が多く、「横浜」のルーツも地名です。神奈川県の横浜市がルーツと考えがちですが、実はそうではありません。 というのも、名字が誕生したのは平安時代後期から江戸時代初期ごろまでが多いのです。江戸時代になるとかなり少なくなります。 一方、横浜が現在のように発展したのは、幕末に江戸幕府によって開港されてからのことです。 そもそも横浜という地名は、かつては入江だった伊勢佐木町から吉野町駅にかけての場所に横に伸びていた砂洲があり、これを「横浜」と読んだことが由来なのです。つまり、現在の横浜は中世にはほぼ海の中でした。 江戸中期になると埋め立てて新田が開発されましたが、それでも開港されるまではひなびた寒村だったのです。つまり、古い時代からずっと横浜に住んで、「横浜」を名字として名乗った人はほぼいないと思われます。 では「横浜」のルーツはどこなのでしょうか。 実は、陸奥国北郡に横浜村という地名がありました。現在の青森県上北郡横浜町です。ここは南北朝時代にはすでにみえる古い地名で、戦国時代には南部氏の一族という横浜氏がおり、湊町として古くから栄えていました。 現在でも「横浜」という名字は青森県に多く、横浜町の隣の野辺地町では町で最も多い名字が「横浜」です。
森岡浩/Hiroshi Morioka
姓氏研究家 1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部在学中から独学で名字の研究をはじめる。長い歴史をもち、不明なことも多い名字の世界を、歴史学や地名学、民俗学などさまざまな分野からの多角的なアプローチで追求し、文献だけにとらわれない研究を続けている。著書は「全国名字大辞典」など多数。
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