「直列8気筒」が生んだエレガントな自動車 30選 前編 戦前戦後の高性能モデル
スタッツ・バーティカル・エイト(1926年)
1926年型スタッツ(Stutz)に搭載された新型4.7L直8は、宣伝用資料に「振動を排除したエンジン」と記述されていた。よほど自信があったのだろう。また、「90馬力以上」のパワーを発生するとも謳われていた。 さらにパワーを求めたスタッツは、後に排気量を5.3Lに引き上げ、デューセンバーグと同様にオーバーヘッドカムシャフトとバルブの数をそれぞれ4本と32個に増やした(それまでは2本と16個)。このバージョンのエンジンは1931年に発表され、最高出力156psという圧倒的な出力を誇った。
ブガッティ・ロワイヤル(1927年)
控えめなサイズの直列8気筒を発表した5年後、ブガッティはまったく別の方向に進み、市販車用としては最大級の12.8L直8エンジンを開発した。この巨大なエンジンは、ブガッティ史上最長の自動車であるタイプ41(別名:ロワイヤル)に搭載された。 しかし、非常に高価であったため、大恐慌に見舞われた1930年代には苦戦を強いられた。ロワイヤルはごくわずかしか生産されなかったが、エンジンは活路を見出し、1950年代までフランスの鉄道車両に使用された。
メルセデス・ベンツ・ニュルブルク460(1928年)
メルセデス・ベンツ初の直列8気筒エンジンはニュルブルクに搭載された4.6Lで、その車名は完成したばかりのニュルブルクリンク・サーキットで大規模テストが行われたことに由来する。1928年当時としては背が高く、ファッショナブルではなかったが、翌年末までに車高を低くエレガントに見えるように再設計された。 1931年には排気量が4.9Lに拡大され、キャブレターの変更とともに最高出力が80psから100psに引き上げられた。1930年代の終わりには、その5倍以上の出力を持つスーパーチャージャー付きの直8が、史上最強のグランプリカーに採用されるようになった。
スチュードベーカー・プレジデント(1928年)
プレジデント(President)は1926年に5.8L 6気筒エンジンを搭載して発売されたが、スチュードベーカーの最高級モデルには直列8気筒の方がふさわしいと思われた。案の定、1928年には6気筒に代わって、小排気量だが間違いなくファッショナブルな、最高出力100psの5.1L直8エンジンが採用された。 同年の7月と8月には、8気筒を搭載した4台のプレジデント(ロードスター2台とセダン2台)がアトランティックシティ・スピードウェイで19日間走行し、平均時速63.99マイル(約103km/h)から68.37マイル(約110km/h)で3万イルを走破した。