合氣道家・藤平信一流「指示待ちタイプが<自分から動ける人>に変わる指導法」とは。無理強いしない・争わない精神で人は育つ
どんな仕事もスポーツも勝って成果を上げるためには、妥協せず自分を追い込むほどの厳しさが欠かせません。一方でハラスメントを恐れるあまり、「ぶれなさ」「必死さ」を次の世代にうまく伝えられないリーダーが増えているのではないでしょうか。国内外の経営者が師事する「心身統一合氣道会」会長藤平信一氏のもとにも、指導者の悩みが多く寄せられています。厳しさとハラスメントの根本的な違いは何なのか?多くのリーダーを見てきた藤平氏がその経験をもとに語ります。 【書影】若い人へ「勝負の厳しさ」をどう伝えるか?新時代の育成論『活の入れ方』 * * * * * * * ◆相手に争う心を起こさせない 私は心身統一合氣道という武道を国内外で指導しています。 心身統一合氣道は「武道」ですが、「格闘技」ではありません。何が違うのか? 目的が違うのです。格闘技はルールに基づき相手を倒すことを通じて、精神的にも、肉体的にも鍛えられます。これに対し、心身統一合氣道は「いかに相手と争わないか」が主な目的です。 「武道」とは「戈(ほこ、武器)を止める道」と書きます。“争わない”というのは、争いから逃げることではありません。 自分の中に争う心を起こさないこと。相手に争う心を起こさせないことです。その結果、相手と争わずに済むのです。そのために求められるのは、自分を厳しく律することです。 そして、自分を律するには、強い心と強い体でなければなりません。このために厳しい鍛錬が必要なのです。合氣道は武道の一つです。合氣道は、相手の関節をひねったり、投げたりするイメージがあるでしょう。 しかし、心身統一合氣道では、この奥にあるものを大事にしています。
◆厳しさとパワハラの根本的な違い たとえば、相手に乱暴なことをしようとすれば、相手の心は必ず抵抗します。ひとたび相手の心を抵抗させてしまうと、投げるのは至難の業です。自分より力が強い相手や体の大きな相手を投げることなど、到底できません。 相手の心を抵抗させないためにはどうするか? それにはまず、相手の心の状態をよく知ることです。つまり、相手のことを理解することです。 理解できなくても、理解しようと努めることです。こうして、相手の心を尊重し、相手の心の向く先に導くからこそ、投げることができるのです。 無理やり、力ずくで投げているわけではありません。相手が行きたい方向を尊重し、相手を導いているわけです。 この後、話に出てくる工藤公康さんや九重親方(元大関・千代大海)の師匠がやっていたことも、これと同じです。厳しい鍛錬をしていますが、無理やりやっているわけではありません。 師匠は厳しい環境をつくり、その中で本人が主体的に自分を追い込んでいく。 これが「人が育つ厳しさ」なのです。上司の都合を押し付ける「パワハラ的な厳しさ」とはまるで違うことがおわかりいただけるでしょう。
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