合氣道家・藤平信一流「指示待ちタイプが<自分から動ける人>に変わる指導法」とは。無理強いしない・争わない精神で人は育つ
◆日常の中で「氣」の存在を意識する 氣などと言うと、何だかとたんに“怪しい”と身構える人もいるかもしれませんね。でも、氣は、みなさんの日常生活にも深く浸透しています。 たとえば、日本語には「気」を含む言葉が多数あります。元気、病気、やる気、気が合う、気が進む、気が置けない。スポーツの世界にいる人は「気合いを入れろ」などと、活を入れられたことも多いでしょう。 九重さんが、気合いについて、面白い話をしてくれました。 九重親方:「相撲部屋は朝が早いんです。早朝から稽古が始まりますから。 若い衆は、朝4時に起きるのですが、じつは、目覚まし時計を頼らないのです。どうやって起きるのか? と思うでしょ。 気合いで起きるんですよ(笑)。
◆気合が入っていれば、目覚まし時計なしで起きられる? 『4時に起きると思って布団に入れば起きられる』って教わるんです。最初はそんなこと無理だろうと思ったんですけど、1か月くらいで完璧にできるようになります。 もちろん、最初はできないから、兄弟子に叱られます。『だらしなく寝てるからだ。気合いが入ってないんだよ』と言われる。 すると、そのうち、3時55分にパッと目が覚めるようになるんです(笑)。 不思議ですよね、いまは念の為にアラームをかけて寝ますけど、それでも必ずその前に目が覚めますね」(以上、九重親方) じつは、私の師匠の藤平光一も同じことを言い、同じ訓練をさせられました。「ちゃんと氣を通しておくと、起きられるようになるから。ただ寝てるから起きられないんだ」と。 思わぬところに共通点がありました。
◆何ごとにおいても気を入れる 先代の九重親方(元横綱・千代の富士)は、やはり気持ちを込める、気を入れるということを大事にしていたのでしょう。そのことについても、九重さんが答えてくれました。 九重親方:「そうですね。朝起きてから、夜寝るまで、本当に気を抜くところがないです。掃除もそうですし、食事の準備もそうですし。相手のことを思ってやらなければなりません。部屋に来られるお客さま、後援者のみなさまに気を配らなければなりません。先輩の雑用にも気を使い、気を込めなければなりません。 気を抜いたらわかるんです。一つ一つの物にも気を込める。たとえば、食事の後の洗い物でお皿を割ってしまうことがあります。考え事をしていたり、嫌々やっていたりすると、やはり割りやすいんです。 で、おかみさんに報告に行くんですけど、それを言うのが本当に苦痛で……。あるとき、コップを割ってしまい、それをごまかそうとして、なけなしのお金で同じコップを買ったんです。でも、すぐにばれました(笑)。 それで、師匠に呼ばれます。『お前、何かしただろ?』『はい、すみません。昨日、コップを割りました』『何で言いにこないんだ』と叱られる(笑)。もうね、全部見透かされちゃうんですよ。だから本当に気が抜けない。気が抜けたり、気持ちが切れたりすると、戒められる。実際に失敗もやらかしますしね。 だから、全方位に気を配る。身に付いてくると、自然にできるんですけど、身に付くまでが大変なんです。基本って、そういうものだと思います」(以上、九重親方)
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