選挙に行くだけでは見えないハイテク「投票用紙の一生」、誕生から最期まで
THE PAGE
選挙で投票に行った際、必ず手にするのは投票用紙です。この投票用紙、一体どのような過程を経て有権者の手元にたどりつき、投開票後はどのような最期を迎えるのかご存知でしょうか。選挙当日、投票所に行くだけでは見えてこない「投票用紙の一生」を追いました。
投票用紙の計数機など選挙関連機材を製造・販売するムサシ(東京都中央区)で、投票用紙のサンプルを見せてもらいました。 じっくりと手に取ってみると、普通のコピー用紙よりも少し固めで、何重に折りたたんでもすぐに元に戻りました。木質由来の紙ではなく、薄いプラスチック製トランプに近い印象です。 紙として使われるのは、ユポ・コーポレーションの合成紙「ユポ」。ムサシと合成紙メーカーのユポ・コーポレーション(東京都千代田区)が共同開発した投票用紙です。 ポリプロピレンが主原料で、水に強く、破れにくいといった特徴を生かして、ポスターや地図、製品ラベルなどに用いられています。投票用紙用の「ユポ」については、筆記用具による書き込みを可能にするための加工が施されています。 製品名は、「テラック投票用紙」。ムサシが営業、ユポ・コーポレーションが紙の生産を担当します。2012年12月の衆議院選挙以降、国政選挙に限ればシェアは100%。今回の衆院選でも47都道府県でこの投票用紙が使われます。 投票用紙を折った状態で投票箱に入れても、中で自然に開くので開票作業時の手間が省ける点がセールスポイント。ムサシ広報室長の篠沢康之さん(57)は、「従来は全開票時間のうち、投票用紙を開く作業だけで約3分の1を費やしていました。この作業を何とか効率化できないか、ということで開発がはじまったのです」と経緯を語ります。 投票用紙用「ユポ」は、茨城県の東南部、太平洋に面した鹿島臨海工業地帯にあるユポ・コーポレーション鹿島工場(茨城県神栖市)で生み出されます。