選挙に行くだけでは見えないハイテク「投票用紙の一生」、誕生から最期まで
いつもながら突然に決定される衆院選の日程。都道府県および市区町村の選管からは「参議院ならある程度事前にわかるが、衆議院選挙は突然で予想ができない」と嘆く声が、相次ぎました。 自治体の選挙管理委員会(選管)だからといって国が解散情報が前もってこっそり教えてくれる、というわけではなく、他の多くの国民と同じくメディアの衆議院解散報道で知るそうです。 事情はユポ・コーポレーションも同じです。「全国の投票用紙需要がまかなえる量をすぐに用意できるのだろうか」と心配はしましたが、杞憂でした。ユポ・コーポレーションでは、急な選挙にも対応できるよう一定量の在庫を保有しているそうです。取材した3日の時点で「今回の衆院選についても必要な量を供給できる見込みです」と話していました。 国政選挙においては、47都道府県の選挙管理委員会が印刷会社に投票用紙を発注します。準備期間が少ないため、大阪府選管では衆議院解散前の26日に発注したそうですが、他の都道府県選管の中には、29日の解散直後に発注したところもあります。 投票用紙の発注枚数は、必ずしも全有権者数と同じ数とは限らないようです。大阪府選管では、過去の投票率などを考慮して、町村は有権者数の100%としましたが、市については約90%にとどめたそうです。他の都道府県選管でも、過去の投票率や自治体の意見を参考に有権者数の約90%に相当する枚数を発注したそうです。 都道府県選管から投票用紙の注文を受け、各印刷会社は投票用紙用「ユポ」の手配を開始。ユポ・コーポレーション鹿島工場から、「ユポ」が全国各地の印刷会社へと旅立っていきます。
印刷会社では、候補者名などを記入する欄や説明文などを印刷、裁断して投票用紙を完成させます。印刷作業の詳細を知りたいと思い、都内の大手印刷会社に取材を依頼しましたが「受注先の投票用紙の情報が特定される恐れがある」などの理由で断られました。偽造、悪用されるリスクがあるためです。国政選挙の仕事に対してこの会社が持つ緊張感が伝わってきました。 今回の衆院選では、小選挙区用がピンク色、比例代表用が薄い藍色、最高裁裁判官の国民審査用がウグイス色に指定されました。総務省自治行政局によると、色を違える理由は、小選挙区の投票用紙なのに比例代表用の投票箱に入れてしまうような投票ミスや、投票用紙の交付ミスを防止するためです。 完成した投票用紙は、投開票が行われる各市区町村選管へと運ばれます。今回は準備期間が短いため、一度にすべての投票用紙を納品するのではなく、期日前投票がはじまった11日よりも前の日と、22日の投開票日の数日前とに分けて納めるケースもあるようです。市区町村に到着した投票用紙の一部は早速、期日前投票に使われます。