「おせちは“プチ富裕層”のもの」「お年玉は悪しき文化」今後、“生き残る”年末年始の風習は? 「風習の“仕分け”」で見えてくる日本の未来
実際、筆者の周囲にも「子どもが『お年玉はいらない』と言っている」という親が何人かいますが、これは裏を返せば「日ごろある程度の頻度でお金をあげている」ということでしょう。昭和・平成の時代ほど、お年玉に執着しない子どもたちが増えているのかもしれません。 一方、「必要」と答えた人は、「お金の使い方や貯め方を教えるいい機会」「キャッシュレスの時代だから正月はお札であげたい」などのポジティブな理由があがりました。今後もこの考え方は残り続けそうですし、そのまま、お年玉という習慣が続く理由にもなりそうです。
ここまであげてきた6つのアンケート結果を「必要」が少ない順に並べていくと、最少がおせち料理(必要7%・不要93%)で、次に年賀状(必要9%・不要91%)、お歳暮(必要13%・不要87%)で、この3つはすでに「日本人のスタンダードとは言いづらい」ところがありそうです。 ■“年末年始の特別感”は薄れている ビジネスの視点から見ていくと、おせち料理はプチ富裕層向けにシフトした感がある一方、年賀状とお歳暮は、ほぼ打つ手がない苦境が継続中。令和の価値観やツールに合う商品を作って電子マネーで払ってもらい、稼いでいくなどの新たな策が求められています。
その点、帰省(必要32%・不要68%)、お年玉(必要37%・不要63%)の2つは半分以下であるものの、「必要」の理由がはっきりしていますし、少なくとも数年間は年末年始の風習として残るのではないでしょうか。 そして初詣(必要66%・不要34%)に関しては、今なお年末年始における最大の習慣と言ってよさそうです。 今回はここ1週間で集めた限定的なアンケートをベースにしましたが、風習のほとんどを「不要」とみなす人がいたように、かつてより「年末年始という時期への特別感が薄れた」という人が多いのかもしれません。
これは風習に限った話ではなく、テレビ番組でも年末年始限定の特番は「NHK紅白歌合戦」などのごくわずかに減り、レギュラー番組の特番が多くを占めるようになりました。 「年末年始でも特別なことはせず、自分の好きなものを自分らしく楽しむ」という人が増えたのでしょう。 逆説的に言えば、だからこそ、この時期ならではの風習を楽しもうとするのか。それとも、楽しもうとしないのか。この先もその個人差はさらに広がり、「多くの人がかかわる国民的な風習というより、一部の人々が楽しむ伝統的な風習として残っていくものが多いのだろう」と思わせられたのです。
木村 隆志 :コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者