60歳で定年退職して、70歳から年金を受給する場合、この間の10年間の生活費はどうすればよいでしょうか? ほかの人たちはどうやって生活しているのでしょうか?
取り崩しにも工夫が必要
前項では「夫婦のみの世帯で約3000万円、単身では約1750万円が生活費としてかかる」というデータを用いました。確かに60歳のとき、退職金もしくは退職金と貯蓄を合わせて3000万円あり、無駄な消費を抑えて生活すれば、70歳まで生活できるのかもしれません。 しかし3000万円がなければ、取り崩しにも工夫する必要が出てきます。 例えば、資金が2500万円あり、毎月25万円ずつを取り崩せば、8年4ヶ月で資金が尽きてしまい、1年8ヶ月分の生活費が足りなくなります。 しかし、この資金を4%で運用しながら同じように25万円を取り崩していけば、10年間で資金は尽きることになり、70歳まで生活ができる可能性が出てきます。 (※注:取り崩しの金額は資本回収係数から算出していますが、一定の利回りで運用できない可能性があります)
長く働く人も増えている
60歳から働かずに年金受給を繰下げしようとすると、それなりに資金が必要になります。 「働かない」と考えた場合は、無収入になった時の対策を早めに講じる必要があります。人によっては現役時代から、資産形成をしながら人生設計を建てる必要があります。 貯蓄や退職金が得られる場合以外で、60歳を目前に何の準備もなく年金を繰下げしようとするのは、無謀ともいえるのではないでしょうか。 また、内閣府が発表している「生活設計と年金に関する世論調査」でも、65歳以上まで働きたいという人が増えてきています。 老後資金の準備として、企業で採用されている制度や、個人でも利用できる「個人型確定拠出年金」などを活用して、60歳時の資金を考えることが大切です。
まとめ
60歳から70歳までの10年間に年金のほかの収入がない場合、今ある資金を活用した取り崩しが必要になります。 今回は家計調査のデータを用いて考えていますが、生活に関しては、さまざまな生活水準があります。60歳からの10年間の生活費がどれくらい必要なのか、自分の生活水準を考えて、生活していくだけの資金を取り崩せるようにする資金を逆算しておく必要があります。 資産運用はお金を増やすだけではなく、取り崩す時も運用しながら取り崩すことで、資産寿命を延ばすことができます。 ただし資産運用にはリスクがあり、予定通り取り崩しができない可能性もあります。現役時代の早い時期から準備して、ゆとりある資金を確保しておくことが大切でしょう。 出典 内閣府「生活設計と年金に関する世論調査」(令和5年11月調査) 総務省「家計調査報告(家計収支編)」(令和5年調査) 執筆者:吉野裕一 夢実現プランナー
ファイナンシャルフィールド編集部