ヒョンデ、新型バッテリEV「アイオニック 5」をビジネスプラン発表会で日本初公開 新型バッテリEV「インスター」は2025年春日本導入
ヒョンデ(Hyundai Mobility Japan)は11月8日、神奈川県横浜市にあるHyundai Customer Experience Center横浜で日本ビジネスについて説明する「Hyundai Biz.Day」を開催。同日から販売を開始した新型BEV(バッテリ電気自動車)「アイオニック 5」を日本初公開した。 【画像】アイオニック 5 Lounge アイオニック 5は2022年2月から初代モデルの日本導入を開始。「Voyage」と「Lounge」の2グレードが設定され、それぞれに後輪駆動のRWD車と4WD車を用意。価格は523万6000円~613万8000円。 ■ 「第四世代バッテリセル」採用で一充電走行距離を最大703kmに向上 新型アイオニック 5の車両解説を行なったHyundai Mobility Japan シニアプロダクトスペシャリスト 佐藤健氏は、アイオニック 5は発売からこれまでに世界で34万台を販売しており、高い支持を得ている一方、さまざまなオーナーが日常的に使うなかで改善してほしいポイントについても要望が寄せられ、今回行なった初めてのモデルチェンジでユーザーの声が反映されていると説明した。 改良点としてまず挙げたのはBEVの駆動システムについて。新たにエネルギー密度の高い「第四世代バッテリセル」を採用して、駆動用リチウムイオンバッテリの容量を従来の72.6kWから84kWhに高めたことで、一充電走行距離を最大で703km(WLTCモード)まで向上させている。モーターの最高出力も強化され、RWD車のリアモーターは5%アップの168kW、AWD車では前後のモーター合計で6%アップの239kWとなっており、モーターの高回転域での伸びも高めて走りの軽快感を向上させている。 また、アイオニック 5はデビュー当時から「800V級電源システム」を採用しており、現在日本国内では急速充電器の設定上限が450Vとなっているが、2025年以降には規制値が引き上げられることも見込まれ、800V級に対応する急速充電器を利用した場合はより短時間で充電できるようになるとアピールしている。 E-GMPと呼ばれるBEV専用プラットフォームの採用で段差のないフロアを実現した車内では、快適な居住性をさらに高めるため、モーター制御の改善やリアモーターの遮音性向上を実施して車内の静粛性を向上させている。 ステアリングホイール内に設置されたプッシュボタンを押すことで切り替え可能な「DRIVE MODE」では、既存の「ECO」「NORMAL」「SNOW」「SPORT」に加え、新たにユーザーごとの設定変更を行なえる「MY DRIVE」を用意。モーター特性やパワーステアリングのアシスト量などをカスタマイズして登録し、ボタンを押すだけで瞬時に切り替え可能としている。 車内装備ではセンターコンソールに設置されている12.3インチナビゲーションシステムがスマートフォンのワイヤレス接続に対応。接続設定したスマホを車内に持ち込むだけで自動的に接続され、スマホが対応する「Apple CarPlay」「Android Auto」を車載ディスプレイで操作できるようになる。また、qi規格対応のワイヤレス充電器は、従来は「スライドコンソール」の低い位置に設定されていたが、「置きにくい」「クルマから出たときに置き忘れてしまう」といった意見が寄せられたことを受け、設定位置を前方側の高い場所に変更して使い勝手を高めている。 このほか、eSIMを使って行なうセルラー通信でのOTA(Over-the-air)アップデートは、従来型では純正ナビゲーションシステムのデータのみ更新を行なっていたが、新型アイオニック 5は車両制御なども含めたソフトウェアアップデートにも対応している。 特徴的な外観デザインはキープコンセプトとしつつ、前後のバンパーデザインを小変更。フロントマスクでは下側の張り出しを強め、SUVらしい力強さを強調しつつ、迫り来るようなダイナミック感を高めている。リアバンパーでも立体感を持たせたデザインに変更して、高い動的性能をデザイン面からもアピールしている。なお、この変更を受けて新型アイオニック 5は全長が従来より20mm長くなった。 最後に佐藤氏は、新型アイオニック 5はモーター出力が5%以上、走行用バッテリ容量は15%以上アップして利便性の高いさまざまなアイテムを備えつつ、車両の平均価格は従来モデルから3%アップに抑えていると説明。「引き続き私たちヒョンデモビリティジャパンでは、日本のお客さまの手が届きやすい価格でアイオニック 5をご提供していきたいと考えております」と締めくくった。 ■ 2029年までの5年間で販売規模を現在の10倍以上に高める ヒョンデの日本ビジネスについては、Hyundai Mobility Japan マネージングダイレクター 七五三木敏幸氏が説明。 ヒョンデは2022年2月に日本再進出を果たし、この約2年半で1500台の車両を国内導入。また、再進出と同時に発売したアイオニック 5が「2022-2023 日本カー・オブ・ザ・イヤー」で「インポート・カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞したことは特筆すべきできごとであり、今年度も「アイオニック 5 N」が最終選考の候補車にノミネートされていることも日本市場で支持されている証だとこれまでの足取りをふり返った。 今後については、世界的に見ても評価の視点が細やかな日本のユーザーに対し、「最高の顧客満足度」を提供していきたいと強調。日本市場から1度は撤退したことを念頭に、日本市場で信頼を得るための取り組みに注力して、日本のユーザーから支持され、評価を受け、乗ってもらい、結果的に日本市場に定着していけるよう努力していき、「私のライフスタイルに合うから、私が待っていたクルマだから、そういった評価でヒョンデに乗っていただきたい」とコメント。 このために「持続可能なモビリティ」「世界最高水準の品質・安心」「快適な購入体験」の3点を日本のユーザーに向けた約束として設定。「持続可能なモビリティ」では走行時に排出ガスのないBEVとFCEV(燃料電池車)を商品としてラインアップする。 「世界最高水準の品質・安心」では、ヒョンデ車に搭載するバッテリは15万kmを走行したあとでも初期の満充電容量から97%の状態を維持できる劣化しないバッテリになっていると紹介。また、日本販売の全車を右ハンドル設定に変更し、ウインカーレバーもステアリングの右側に移動。右ハンドル仕様の国産車から違和感なく乗り替えてもらえるようにしている。 「快適な購入体験」としては、オンライン、オフラインの双方で快適な購入体験を提供できるよう、ホームページで展開しているデジタルカタログやオンラインチャット、試乗申し込み、車両購入などのオンライン体験のほか、オフラインでもHyundai Customer Experience Center横浜や国内3か所に展開する「Hyundai Citystore」、アライアンスパートナーであるオートバックスなどの店舗で展開する「Hyundai Mobility Lounge」における車両展示や購入相談を実施して、ヒョンデ車に興味がある人にカジュアルな形でコミュニケートできる体制を整えた。 このほかにモデルラインアップでは、直近の話題として3つのモデルを紹介。10月にコンパクトSUV「コナ」の限定車として発売した「マウナ ロア」は、ハワイ島にある火山のマウナ ロアの名称を車名に与えることでSUVとしてのタフさを各種特別装備によって表現している。 もう1台は同日に販売を開始した新型アイオニック 5で、今回の刷新では最大703kmの一充電走行距離を実現したほか、数々の魅力的な装備や機能を追加してユーザーの利便性を向上させている点をアピールした。 最後の1台は将来的な日本導入モデルで、6月に開催された「釜山モビリティショー 2024」で世界初公開されたコンパクトSUV「インスタ-」。2025年春の日本導入を予定するインスターは、コンパクトなBEVの限界をはるかに超える航続距離を実現していると七五三木氏は紹介。日本の道路事情にもマッチするボディサイズであり、今から胸がときめいてしかたないと述べている。 こうした取り組みにより、中期計画としては2029年までの5年間で販売規模を現在の10倍以上に高めることを目標として設定。しかし、戦略的なモデルの導入を行なって販売台数を高めるような道筋を作ることは考えておらず、あくまで日本のユーザーに「自分のライフスタイルに合っている」「自分の使い方に合うのはヒョンデしかない」という評価から購入してもらい、日本市場に浸透していくうちに自然な形で達成されていく目標であると七五三木氏は表現している。 ■ コナ マウナ ロア
Car Watch,佐久間 秀