体温で柔らかくなり体に合わせて伸縮する新感覚の素材「HUMOFIT®」
ー「HUMOFIT®」にはどのような特徴がありますか? 「HUMOFIT®」を手にのせていただくと、体温が伝わって素材が柔らかくなり、手形にシートが変化します。手を離すとしばらくその形を維持しますが、次第に元のシート状に戻っていきます。
もうひとつの特徴は、応力緩和性が高い点です。シートを引っ張っていただくと、体温が伝わってゴムのように伸びます。ゴムの場合は引っ張った状態を維持するために、力を入れ続けないといけません。戻る力がありますからね。 ところが、「HUMOFIT®」は応力緩和性が極めて高く、伸ばすときには力がいるのですが、戻る力は緩やかです。ということは、体にフィットするのですが、締め付け感は非常にマイルドになるわけです。そのため、体との親和性が非常に高いという特徴があります。 ーどういった原理で「HUMOFIT®」が柔らかくなったり、伸縮したりするのでしょうか。 化学技術用語で、ガラス転移温度というものがあります。アクリル板をイメージしてほしいのですが、通常は硬いですよね。ところが、70℃くらいになると柔らかくなります。このように、硬い状態と柔らかい状態の転換となる温度というものが存在します。溶ける温度を融点といいますが、その一歩手前の状態ですね。 「HUMOFIT®」のガラス転移温度は28℃です。そのため、体温ほどの温度で反応してくれます。通常、我々の生活している温度域に近いガラス転移温度のものが身近にあると、いろいろと支障をきたすので避けるのが一般的です。 「HUMOFIT®」は、いわば業界の常識を大きく逸脱した素材といえます。 ー取り扱いが難しそうな素材ですね。 扱いにくい素材かもしれません。手に取っただけで変化しますし、部屋の温度にも敏感です。夏と冬でも、違った表情を見せてくれます。 それは加工の際も同じです。たとえば、工場のミシンで縫製するときにも、稼働したての場合は調子が良いのですが、徐々に熱を持ち始めると、途端に素材がくっついたり伸びたりするので、急に難易度が上がってしまいます。 素材としては面白いけど、温度依存性が大きいので取り扱いが難しい。使いたいと声をかけてくださる加工メーカーさんも多いので、まずはこの素材の特徴をしっかりと説明することから始めます。そのうえで、どこの加工メーカーさんでも加工ができるような仕組みづくりが必要になってきます。 「HUMOFIT®」を広げるためには、クリアしなければならない課題が数多くあります。知名度もまだ低いですが、多くのお客様にこの驚きの素材を届けたいと思っています。