連覇を狙った春高、無念の"不戦敗"から4年 東山高校当時の主将・吉村颯太が臨む最後の全日本インカレ「始まるのが楽しみ」
最後の全日本インカレへ「優勝を狙える」
大学に入って山本監督から求められたのは、レシーブ力だった。高校時代からレシーブの要と言うべきポジションを任されていたから、入学時は少なからず自信を持っていた。1本1本、まるでバレーボールを始めたばかりの小学生の頃を思い起こさせるようなレシーブ練習に「このレベルで必要なのか?」と最初は戸惑った。ただ、手先だけで返そうとすれば「違う!」と叱責(しっせき)された。うまくいかないプレーがスパイクやブロックではなく、最も得意としてきたレシーブであったことに悩んだと吉村は言う。 「オーバーもアンダーも、自分では今までと同じようにやっているつもりなんですけど、『ここへ返せ』という場所に返らない。だからできるまでやる。何でこんなところに来ちゃったんだろう、って思ったこともあります(笑)。でもよく考えると、高校の時は健斗さんがいたから、パスが多少ズレても平然とトスにしてくれたので、そこに意識を向けなくてよかったんだ、と気づいたんです」 同じ形で何度も何度も、数え切れないほど練習を重ねていくうちに、3年生になる頃には『これだ』という感覚も得た。実際に返球の精度も上がり、Aパスの本数が増えれば、試合にも勝った。やってきたことが成果につながると、今まで「これが大事だ」と言われ続けてきた意味が、驚くほどスムーズに理解できた。 その矢先に東日本インカレでの敗戦があり、改めて自分自身を見つめ直す機会を得た。最終学年では高校時代の経験もあって「キャプテンだけは絶対に嫌だった」と笑うが、春季リーグや東日本インカレ、夏合宿を経てチームとして戦う形が構築されていくのを実感した。秋季リーグは7勝4敗で5位。目指した優勝には届かなかったが、その悔しさも最後の全日本インカレに向けた糧になっている。 「レシーブだけでなく、サーブ力がついたので、どんな相手に対してもサーブが走れば勝てる。『やっぱりサーブとサーブレシーブだ』と手応えを得られたし、夏合宿と秋リーグで自信がついた。何より勝ちパターンが見えたことがチームにとっても大きいことだと思うし、だからこそ、自分が崩れちゃダメだ、って。リーグ戦と違って、トーナメントは勢いに乗ったチームが勝てる大会だと思うので、サーブで一気に流れをつかみたいし、どんな相手にも勝てる力をつけたい。今は本当に心から、優勝を狙えると思っているし、狙わないといけない。今まで悔しい思いをしてきた分、絶対やってやるぞ、って。どんな戦いができるのか。始まるのがすごく楽しみだし、欲を言えば最後の最後、優勝を決める1点を決められたら最高ですよね」 誰よりも「これだけやってきた」と胸を張れる。だからこそ誰よりも、この1本を丁寧に。あの負けがあったから強くなれた――。あっという間の大学生活を、笑顔でそう締めくくることができたら最高だ。
田中夕子