連覇を狙った春高、無念の"不戦敗"から4年 東山高校当時の主将・吉村颯太が臨む最後の全日本インカレ「始まるのが楽しみ」
東山で〝人生初〟のキャプテン就任「しんどくて……」
吉村が言う〝あの時〟は、2021年1月7日。全日本高校選手権(春高)に出場していた東山はチームに発熱者が出たため、不戦敗を余儀なくされた。3回戦で突如連覇への夢が終わった。最後の春高を振り返る言葉は冷静だが、完全に吹っ切れたかと言えばウソになる。 「会場へ行くまでは、普通に試合ができると思っていたんです。会場の外でアップをして、いざ入ろうとしたら『体温を計って下さい』と言われて。動いた直後だったので何人か体温が高かったこともあって、もう1回確認できるまで入っちゃダメだ、と。待っている間にボールを触ろうとしたら『触らないで』と強い口調で言われた時も、俺ら試合に向けて準備してきただけなのに、なんでそんなことを言われるんだろう、って。その後、体温を計ったらやっぱりダメだと言われて、出られない、と決まった時も受け入れられなかった。ホテルに戻ってからも泣いたし、周りの人たちがこんなふうにメッセージを送ってくれたよ、と言われても僕は全然、切り替えられなかった。春高までずっとしんどくて、それでも頑張れたのは連覇のため。だから余計に苦しかったです」 前年に出場した春高は決勝で駿台学園(東京)に勝利し、失セット0の完全優勝を果たした。1学年上でエースの髙橋藍(現・サントリーサンバーズ大阪)とセッターの中島健斗(現・VC長野トライデンツ)は抜けたが、日本一を達成したメンバーが多く残っていた。連覇を狙う新チームでキャプテンに就任したのが吉村だ。だが、意外にもキャプテンは〝人生初〟。選手として自分のパフォーマンスだけを考えればいい状況とは異なる重責に、何度も押しつぶされそうになった。 「中学時代に全国優勝した選手もいるし、とにかくみんな個性が強いからそれぞれが主張する。そうなるとチームがうまくいかなくなって、その責任はキャプテンに向けられる。レギュラーだけでなく、チームの誰かが何か問題を起こした時も、キャプテンとしてしっかりできていないからだ、と叱られる。そういう立場に立つこと自体が初めてだったので、とにかく僕にはしんどくて。周りの同級生も僕が大変だとわかって、気遣ってくれているんですけど、みんなそれぞれプレーの面でも求められることがあるから、結局は自分がしっかりしなきゃいけない。どうしたらいいんだ、って毎日悩んでいました」 コロナ禍も重なり、公式戦も次々中止になった。不安な中で迎えたのが最後の春高で、初戦の東海大相模(神奈川)戦は「苦しいことが多かった分、一番楽しくできた」と振り返られるからこそ、信じがたい最後を受け入れられなかったというのも無理はない。 不完全燃焼のまま卒業し、入学した日体大では今までとはまた異なる課題を突きつけられた。「びっくりしました。自分がこんなにできないなんて、考えもしませんでしたから」