認知症の母とダウン症の姉。にしおかすみこが「お出かけ」に挑んでわかったこと
母、81歳、認知症&糖尿病。 姉、48歳、ダウン症。 父、82歳、酔っ払い。 私、47歳、元SMの女王様キャラの #一発屋 の女芸人。 【写真】介護との話がお笑いライブみたい? カリスマ介護士とにしおかすみこさん 全員今でもポンコツである。 冒頭の「家族紹介」にこんなパワーワードが続くのが、にしおかすみこさんの『ポンコツ一家2年目』だ。 にしおかさんが久々に実家に帰ったとき、ゴミ屋敷のようになっている実家と、大黒柱だった母が大きく変わっていたことに衝撃を受けたのが2020年のこと。そのときから同居をはじめ、2024年で4年目になる。1年目のことをまとめた書籍『ポンコツ一家』『ポンコツ一家2年目』と2冊とも「他人事ではない」と多くの人から声が寄せられている。11月14日にはカリスマ介護士の高口光子さんとのトークライブをジュンク堂書店池袋本店にて開催した(11月29日までアーカイブ配信中)が、視聴者からも「にしおかさんが壮絶な環境でもユーモアをもって受け止めているのがすごい!」「思わず笑ってしまう捉え方を参考にしたい」というコメントが寄せられた。 1年前のことを赤裸々に綴る連載「ポンコツ一家」39回は、2023年12月のエピソード。11月18日が誕生日のにしおかさん、49歳になってからひと月ほど経ったある日のできごとは。
2023年12月某日、朝6時すぎ
2023年12月某日、朝6時すぎ。 「うへぇ、お姉ちゃん。もう起きてきたの?」と居間から母の声が聞こえる。 「きょうは おんな3にんで ごちそうたべにいくひなの。ビックリィ~ベント~!」 そう。惜しい。ビッグイベントね。大きなお弁当みたいに聞こえる。 私は廊下を掃除しながら、「ランチだから、まだ寝てていいよ。気が早いよ~」と声を張る。狭い間取りだ。聞こえたはずだが返しはない。大きな独り言になった。 「スン」と鼻から惰性のような息を吐き出し、玄関の小窓を開けて換気する。凛とした中に土と陽だまりを混ぜたような冬の匂いがスゥーっと、慣れてしまった実家臭のど真ん中を突き抜けていく。寒いが、晴天だ。 7時半。ある程度の家事を終え、コーヒーを台所で立ち飲みしながら、 「ご馳走、コースで品数たくさん出てくるから、お腹空かせておいたほうがいいよ。食べきれないよ」と居間に顔を出す。 ふたり揃って「え?」と、カレーの匂いをプンプンさせながら振り返る。こちらが、え?だ。 上から見下ろすと、ローテーブルに黄色いルーがこびりついた空のタッパーが2つ。どうやら冷蔵庫から冷凍してあった作り置きを出し、レンチンして食べたようだ。いつの間に。 「も~せっかく行くのに。朝からどんな食欲だよ」とため息まじりに訴える。