「法の支配無視」主張する日本製鉄、2つの訴訟を提起…バイデン氏の行動は極めて問題あるという認識
日本製鉄は6日、バイデン米大統領が禁止命令を出した米鉄鋼大手USスチールの買収計画の実現に向け、米国で両社共同による二つの訴訟を提起した。訴訟を同時に進めることで、昨年の大統領選で再選を目指していたバイデン氏が法の支配を無視し、約85万人の組合員の集票力を持つ全米鉄鋼労働組合(USW)と連携していたとして、買収計画の阻止が不当であることを明らかにする狙いがある。 【図解】USスチールの買収計画、なぜ政治問題になったのか
今回の訴訟で両社は、バイデン氏が米政府の対米外国投資委員会(CFIUS)による買収計画の審査に影響力を行使したことを明らかにして禁止命令を無効にし、審査のやり直しを求めている。日鉄は「日本は米国の長年の同盟国であり、これまで大統領が国家安全保障上の理由で日本企業による取引を阻止したことは一度もない」と主張し、バイデン氏の行動は極めて問題があるという認識だ。
両社は、米鉄鋼大手クリーブランド・クリフスや、クリフス社で勤務経験があるUSWのデビッド・マッコール会長らが虚偽発言などを通じて買収計画の妨害行為を行ったことを訴訟を通じて明らかにしたい考えだ。マッコール氏らの妨害行為を立証することで、バイデン氏らに対する訴訟を優位に進めることを目指す。
クリフス社は過去、USスチールに買収提案したものの拒否され、日鉄が勝ち残った形で交渉が進められてきた経緯もある。クリフス社とUSWは買収計画を阻止することでUSスチールを弱体化させ、米国の鉄鋼市場のクリフス社による独占を狙っていることも明らかにしていく方針だ。