「東大の値上げ」学生達が首を傾げる“問題の数々”。値上げの使い道など、疑問を抱く学生は多い
東京大学は、学費の値上げを今年9月に正式に決定した。学部入学生は2025年度から、大学院修士課程の入学生は2029年度から新たな学費が適用される。一方で「卓越した研究者の養成は東京大学の使命」として、博士課程の学費は据え置かれることになった。 学費値上げの検討が明らかになったのは今年5月。以後、学生や教職員から値上げに反対する声が上がったものの、学生には検討のプロセスが明かされないまま、休み期間中に値上げが決まった。 【図表を見る】値上げを決定した東京大学。その使い道は?
特に、文系で大学院への進学を予定している学生は「今後文系の学生が修士課程に進みにくくなる」と異を唱える。今回は院生ではなく、院への進学を目指している東京大学の文系学部生らに話を聞いた。 ■値上げ決定は「だまし討ち」 「大学が9月に値上げを発表することを、学生はまったく知りませんでした。夏休み中に決定したのは完全にだまし討ちです。 学生が意思決定のプロセスに入ってないどころか、排除されたうえでの今回の値上げ決定は、大学運営において『構成員の円滑かつ総合的な合意形成に配慮』すると謳った東京大学憲章にも反するものです。こんなやり方が通用すると思っているのであれば、大学執行部は学生や社会をなめているのではないでしょうか」
学費値上げ決定に憤るのは、東京大学教養学部学生自治会に所属する学生だ。自治会が5月に実施した第1次アンケート調査では、約2000人の回答者のうち、9割の学生が値上げに反対の意を示した。 さらに、具体的な値上げ案が明らかになった9月以降にも第2次アンケートを実施したところ、491人が回答。そのうち約8割の学生が学費値上げに反対している。 これだけ根強い反対の声があるのは、学生には大学側が強引に値上げを決めたようにしか見えないからだ。
学費値上げの検討は今年5月にメディアの報道によって明らかになった。報道を受けて大学は、学内のシステムで「現段階では検討中で決定事項として周知できる情報はない」として、検討結果を速やかに知らせると説明した。 これに対して、本郷キャンパスで開催された五月祭では、学生らによる学費値上げ反対のデモが起きたほか、6月には学費値上げに反対する緊急集会も開かれた。同月に実施された藤井輝夫総長とのオンラインでの「総長対話」では、大学執行部だけで検討を進め、トップダウンで決定をしようとしているとして批判が集まった。