もう一つの東京五輪…審判への一部SNS批判もあるけれどカヌー競技の日本人審判はいかにして夢舞台を“ジャッジ”したのか?
連続メダルが期待された羽根田は予選、準決勝と勝ち進み上位10人の決勝まで進んだが、10位に終わり、田中氏がスタッフに「日の丸を用意しておけよ」と言って見送ったカヤック・シングルの足立和也(30、ヤマネ鉄工建設)も予選は勝ち抜いたが準決勝で敗退となった。 羽根田は、直前に大幅変更されたコースに戸惑い、地の利を失ったが、これも田中氏、曰く「公平性を担保するために通常行われること」だという。 「水流が複雑で難しいコースになったが、世界の強豪は、そういうコースへの対応力が早かった。でも羽根田は新型コロナの影響で練習が満足にできない状況で決勝の10人に残ったのは誇るべきこと。初出場の足立は硬かった。この経験を生かして欲しい。今大会は無観客でトップ選手のミスなどの番狂わせが起きにくい環境にあり、実力通りの順位となる傾向にあったと思います」と、ハネタク、足立らの健闘を称えた。 25日から始まったスラローム競技は30日に終了した。組織委員会に指定されたホテルに入ってからは、PCR検査が連日行われ、会場とホテルを専用のバスで移動するだけで一歩も外へは出られなかった。お弁当が配られ、買い込んでおいた冷やしたビールの晩酌が唯一の息抜き。選手同様、気の抜けない毎日が続いた。 審判の東京五輪とは何だったのか? 「感じたのは、客がいない寂しさ。五輪の祭典という感じがしなかった。審判でそう思うのだから選手はなおさら寂しかったと思う。でも僕にとっても選手にとってもカヌー界にとっても得難い経験をさせてもらった。人生の記憶に刻まれる1週間だった」 五輪は8日の閉会式まで続くが田中氏は1日に故郷の大分へ帰る。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)