カナダの先住民ストーリーを分かち合う観光施設を取材した、そこでしかできない交流と体験、文化を知るアクティビティ
毛皮貿易の仕事を体感できるアクティビティの数々
翌日は、メイティ文化を体験するアクテビティの1日。メイティの文化を知る上で欠かせないのがバイソン猟だ。 バイソンや馬がいる5つの放牧場をSUV車で回るツアーは、地元入植者である牧場主の協力によるもの。バイソンをこの地に戻すというメイティの望みが叶い、伝統のバイソン猟と結びつけたアクティビティだ。見られるのは、ウッドバイソン、プレーンズバイソンや希少なホワイトバイソン、エルク(ヘラジカ)、ペルシュロン種の馬。実際に猟をするわけではないが、野生に近い状態で放牧されている動物たちの群れを探しながら、車で追っていくハンター気分が楽しめる。 実際のバイソン猟は馬で走りながら銃で狩りをするため、偵察、指揮官、狩猟隊など役割分担があり、コミュニティ全員が参加した。それをまとめるために規則を作り、高度に組織化されていった。「メイティはビーバーとともに形成され、バイソン狩りによってネイション(民族意識)がもたらされた」といわれるそうで、春の終わりから初夏の狩りは親戚が集まって親睦を深める場でもあったという。 夏季に催行される「Paddle into the past」というツアーでは、メイティ文化の源となる毛皮貿易にまつわる仕事や生活を学ぶ。バイソンの皮を剥いでなめし、乾燥肉のペミカンを作り、モカシンという靴やサッシュなどの衣類を作り、ビーズや刺繍で飾るのは女性たちの仕事だった。 カラフルなサッシュはヘルニアを防ぐウールベルトで、止血帯や牽引ロープにしたり、小物入れにも使われた。英国王チャールズ3世の戴冠式でもみられた王冠やローブにあしらわれた白い毛皮は、冬に白くなるイタチ科のオコジョのもの。アーミンと呼ばれる高級毛皮で、実際に触れてみるときめ細かくふわふわだ。ビーバーの毛皮は、英国からの要求で硬い刺毛を取り除いたうえで、黒く染めてから出荷していた。これらの毛皮はレッドリバーカートという荷車で運ばれた。釘を使わず木材のみで組み立てたのは、軽量かつ壊れても材料を手に入れやすかったためだという。 展示を見ながらのレクチャーのあとは、夏のアクティビティのハイライトとなるノース・サスカチュワン川の川下り。カヌーの漕ぎ手でもあったメイティに倣い、カヌーでおよそ1キロ下った先にあるフォートビクトリアに向かう。 ハドソン湾会社が1864年に設立した先住民との交易所だったところで、現在はビクトリアディストリクトの歴史博物館となっている。当時の衣装を着た案内人の説明を受けながら、40キロの荷物(実際は重くない)を運んだり、在庫リストに昔のペンで記帳したり、スティルツというヨーロッパ式竹馬で遊んだりとハドソン湾会社で働いた人々の生活を擬似体験する。アルバータ州最古の木造建築のひとつ、1864年に建てられた事務員の家も当時の位置のまま佇んでいる。