サムライ短距離陣400mリレーの敗因は衝撃のバトンミス失格だけではなかった…個々のピーキングの失敗
真夏の花火は一瞬で消えてしまった。東京五輪の陸上競技。8月6日のイブニングセッションは最終種目の男子4×100mリレー決勝で“最高潮”に到達するはずだった。 しかし、金メダルを目指していた日本は1走・多田修平(住友電工)が好スタートを切るも、2走・山縣亮太(セイコー)にバトンが届かない。 男子100mで日本記録を持つエースの左手にバトンは触れたが、無情にもふたりのスプリンターは30mのテイク・オーバーゾーンを越えてしまう。日本短距離陣の夢は儚く消えた。 レース直後のインタビューでは、「バトンミスをしてしまって……。原因はちょっと分からない」と多田。バトンをつかみとることができなかった山縣は、「皆で話し合い、目標を達成するために攻めのバトンをやることになりました。これは勝負に行った結果だったと思います」と神妙に話していた。 決勝の舞台を走ることができなかった桐生祥秀は、「日本の国旗をこの舞台で掲げたかったんですけど、こういう結果になったのは誰も悪くない」と涙を浮かべていた。 日本の敗退が「バトンミス」にあったのは間違いない。しかし、その原因を作った理由は別にある。それは選手個々のレベルが2021年8月6日の夜にピークを迎えることができなかったことだ。 2016年のリオ五輪で日本は37秒60のアジア新記録(当時)を打ち立てて、銀メダルに輝いた。2019年ドーハ世界選手権ではアジア記録を37秒43まで短縮して銅メダルを獲得。5年前はゼロだった100m9台スプリンターは4人になった。 この5年間で日本短距離界のレベルは上がり、選手、日本陸連、メディアは東京五輪で「金メダル」を目指せると本気で考えていた。ただし、東京五輪本番を迎えた日本代表選手たちの個々の状態は思うように上がっていなかった。 個人種目は男子100mの多田修平、山縣亮太、小池祐貴(住友電工)が予選で敗退。男子200mも山下潤(ANA)、飯塚翔太(ミズノ)、サニブラウン・ハキーム(タンブルウィードTC)が予選で落選した。 男子4×100mリレーの予選(1組)は多田、山縣、桐生、小池のオーダーで臨み、38秒16で3着。着順で通過したとはいえ、予選タイムは決勝に進出したチームの中で最下位(8番目)だった。