サムライ短距離陣400mリレーの敗因は衝撃のバトンミス失格だけではなかった…個々のピーキングの失敗
予選が終わった後、選手たちは「決勝では攻めのバトンをしたい」とコメントしていたが、テレビ解説を務めていた高平慎士氏(北京五輪男子4×100mリレー銀メダリスト)は決勝の戦い方について、こう疑問視していた。 「予選は多田選手も山縣選手もいい走りだったとはいえませんでした。決勝は(走りが)予選のままでバトンを攻めたかたちだったのか。それとも1段階、2段階上がった走力で攻めるバトンにしたかで大きく変わってきます。もしかすると、攻めたマークが少し遠かったのかもしれませんよね」 今回、金メダルを獲得したのはノーマークだったイタリアで優勝タイムは37秒50だった。日本がドーハ世界選手権で樹立したアジア記録(37秒43)を下回っている。直近3回の世界大会の優勝記録は、リオ五輪が37秒27(ジャマイカ)、ロンドン世界選手権が37秒47(英国)、ドーハ世界選手権が37秒10(米国)だったことを考えると“優勝ライン”は下がっていただけに、絶好調の日本ならチャンスは十分にあったはずだ。 しかし、今回の日本代表は「金メダル」を狙いにいけるほどの状態ではなかったと感じている。日本と優勝したイタリアの100mパーソナルベストとシーズンベストを比べると理解できるかもしれない。 【日本】 1走・多田 10秒01/10秒01 2走・山縣 9秒95/9秒95 3走・桐生 9秒98/10秒12 4走・小池 9秒98/10秒13 【イタリア】 1走・パッタ 10秒13/10秒13 2走・ヤコブズ 9秒80/9秒80 3走・デサル 10秒29(20秒13)/10秒38(20秒29) 4走・トルトゥ 10秒13/10秒13 ※デサルはメイン種目の200mも( )で表示。 パーソナルベストとシーズンベストの合計タイムは日本が39秒92と40秒21、イタリアは40秒35と40秒44。パーソナルベストは日本が0秒43も上回っていたが、シーズンベストは0秒23差しかなかった。 これを見ると日本とイタリアでは後者の方がビッグイヤーに合わせる能力が高かったといえるのだ。さらに東京五輪中にイタリアは調子をグンと上げている。東京五輪が始まる前のヤコブズは自己ベストが9秒95で山縣と同タイムだった。しかし、男子100m予選で山縣と同じ組に入り、トップ通過を果たすと、100mの金メダルまで一気に突っ走ったのだ。一方、山縣は予選で落選。エースの仕上がりがリレーにも大きく影響したといえるだろう。