大規模な伐採、豪雨により「土砂崩れが多発」 見直し求められる林業政策 #災害に備える
林野庁の見解は
林業の専門機関によると、2018年に木材生産のために主伐された森林約8万7000ヘクタールのうち、皆伐面積は5万ヘクタール前後だという。皆伐面積は少しずつ拡大する一方、豪雨時には皆伐跡地から土砂崩れが多発している。再造林も主伐面積のうち約3万ヘクタールにとどまっている。 豪雨時、主伐の際に業者が作設する「集材路」から土砂崩れが相次いでいることは、政府も認めている。集材路とは、木を伐採する時に一時的に造られる作業道を指す。今年5月の衆院農水委員会で、共産党の田村貴昭議員が粗い施業が災害を引き起こしている可能性を指摘すると、金子原二郎農水相(当時)が「粗雑な集材路の周辺で林地崩壊が多く確認されている」と答弁した。
集材路だけでなく、皆伐の跡地でも土砂崩れが発生していることについて、林野庁はどうみているのか。森林整備部の担当者に聞いた。 「土砂崩れの一番の原因は、治山等の専門家による調査において想定を超えた豪雨とされています。しっかりと根を生やした森林でも土砂崩れが起きています。ただし、皆伐後に残った根が10年程度かけて腐っていくことで、山の土壌保全機能が低下していくことは否定できません。皆伐等の施業と土砂崩れの関係性については、現地の調査をしながら知見を蓄積しているところです」 甘いとも言われる皆伐の規制について、見直す考えはないのか。 「これまでも、土砂災害が発生しやすいエリアなど必要と考えられる森林については、禁伐も含め伐採規制を設けています。その一方で、森林は私有財産であり、どこをどう伐採するかは基本的に所有者の判断に委ねられており、これを規制することは憲法で保障される財産権を侵害するおそれがあることから、慎重に検討する必要があります。近年、雨の降り方が変わってきたことも認識しており、経済行為としての林業と、森林の多面的機能の発揮がしっかり両立されるよう取り組んでいきたいと思います」