大規模な伐採、豪雨により「土砂崩れが多発」 見直し求められる林業政策 #災害に備える
現地調査した団体は
熊本豪雨の約5カ月後、自伐型林業推進協会(自伐協)の中嶋健造代表理事は球磨村に入り、現地調査をした。大規模皆伐をした場所からの土砂崩れが数多く見られたという。 「被害の大きかった球磨村の一部と八代市坂本町での現地調査では、斜面崩壊236カ所のうちの9割以上が皆伐跡地、もしくは地形や土質、水の流れを無視して作設された林道や作業道が起点になっていました。球磨川流域の林地は、急峻かつ複雑な地形で土砂崩れが発生しやすいのですが、山の尾根の多くで皆伐が広がっていました」
作業道が原因になることも
皆伐のために造る作業道も、ときに土砂崩れの原因になるという。作業道は、道幅が広くなるほど崩壊しやすくなる。2トントラックが通れる幅2.5メートル程度に抑える林業家もいる一方、前述のように近年は高性能林業機械の導入が進んでいるため、大型車両が通れるように幅3メートル以上の道も増えている。 その際、山の斜面を削って作業道の幅を広げる。道は、地形に合わせて正しい路線を設定し、丸太などで補強しなければ、大雨が降った時に土砂崩れを起こしやすくなる。しかし、一部の業者がそれを怠り、作業道が起点となって土砂崩れが起きたケースが熊本豪雨では見られたという。
熊本以外でも皆伐跡地が崩落
皆伐跡地や作業道・林道から土砂崩れが起きているのは、熊本だけではない。2019年の台風19号で土石流が発生し、12人の死者・行方不明者を出した宮城県丸森町も同様だ。斜面崩壊が多く発生した廻倉地区を自伐協が調査したところ、崩壊54カ所のうち35カ所が皆伐跡地で、さらに18カ所が林道や作業道だった。 丸森町の実家が全壊した40代の女性は、「土石流災害が起きる前から、雨が降ると山から泥が流れてくることがあった。地域の人は『山の奥で木を切ったからじゃないか』と言っていた」と話す。18年の西日本豪雨でも、広島、岡山、鳥取などで同様の崩壊が発生していた。 最近では、太陽光パネルを設置するために皆伐した山から土砂崩れが発生している。鹿児島県姶良市では今年7月、大雨の後にメガソーラー(大規模太陽光発電所)の造成地から土砂崩れが起き、ふもとの農作業小屋や畑が被害を受けた。県は業者に復旧と再発防止策などを求める勧告を出した。