「次世代のバラ」を知っていますか? バラ育種家・木村卓功さんが語るバラへの思いと魅力
初心者でも育てやすいバラとは?
「木村さんがお気に入りのバラは何ですか」とよく質問を受けるのですが、好きなバラは日々変わります。中でも、一番気持ちが盛り上がってくるのは育種過程のバラです。発表してしまうと、私(のバラ)から皆さんのバラに変わってしまいます。私や当社のスタッフが見続けている中で、この品種は恐らく人気になりそうだねとか、こういう品種は受け入れられそうだね、みたいに世に出てないバラたちのこれからを想像している時が一番、夢中になります。 初心者でも育てやすいバラを三つ挙げるとすれば、一つ目は「シャルール」。黄色からオレンジの複色のバラで非常に育てやすく、よく咲きます。二つ目は「第22回ぎふ国際ローズコンテスト」(岐阜県可児市)で金賞を受賞した黄色の「ディコン」もすごく育てやすいです。三つ目は、昨年の春に発表した「プリマヴィスタ」というピンクのバラです。春でも夏でも花がきれいで、香りも良くて、四季咲き性なのでまとまって咲きます。 他にもいっぱいあるので、他のバラに怒られてしまいそうですけどね。 現在、「バラの家」の実店舗は国道4号線沿いにありますが、敷地が狭いので、新品種を植えることができません。 愛好家からは、地植えで実物の樹形を見たいという声があり、来年の秋を目標に移転したいと思っています。ロサオリエンティスのバラを全部、地植えにして、月に一回とか最低限の薬剤散布で育つ姿を見せたいと思っています。バラの店舗と見本園みたいなイメージです。まだ、計画通りにいくか分からないですけどね。(後編につづく) ☆補足情報☆ ロサオリエンティスの品種は、タイプ0~タイプ4までの5段階に区分されている。数字は育て易さの指標でタイプ0が最強で初心者向き。バラが健全に育つために必要とされる月々の病気に対する薬剤散布回数も表す。例えば、タイプ2のバラは生育期間(3月~11月)に月に2度の薬剤散布を行えば1年を通して綺麗な株姿を維持しやすい。タイプ4は生育期間に毎週の薬剤散布が必要となり栽培が難しく、上級者向きのバラを表す。 現在、ロサオリエンティスのプログレッシオは耐病性が高いことから、初心者向けのバラとして紹介。タイプ0、1が多いが樹勢には幅がある。特に、枝が広がらず、樹高も高くならないでコンパクトな樹形になると花を付けすぎる品種もある。そのような品種の場合、初期生育時期は株を育てるために、つぼみを摘み取る作業が必要になる。今後、耐病性が高くても、多少の手間を掛ける必要がある品種を「ロサオリエンティス ノヴァ」というサブブランドで2024年秋の新品種「サシェ」から販売を始めた。 ・プログレッシオ=樹勢、耐病性が強い品種(超初心者向け) ・ノヴァ=耐病性は高いが、コンパクトで花が付きやすい品種は初期生育時期に手をかける必要がある 撮影・聞き手:竹谷俊之
朝日新聞社