「次世代のバラ」を知っていますか? バラ育種家・木村卓功さんが語るバラへの思いと魅力
このままではバラは廃れる
25歳のころに作出した「わかな」は、当初、切り花として販売していました。当時、某大手バラ園でも緑色のバラはなかったので「販売してもらえますか」とお願いしましたが相手にしてもらえませんでした。34歳のころ、「わかな」をネットショップで販売し始めると人気になり、同時に直接、お客様の一次情報が入ってくることが分かりました。事業をしていく上で大事なことだと気づかされました。その後、ネットショップでのバラ苗販売が人気になっていく時代と重なり、毎日が忙しかったのですが、今思えば楽しい時代でした。 「わかな」を販売した後、いろいろな品種を出しましたが、2013年に東洋のバラというコンセプトで「ロサオリエンティス」というブランド名でバラ苗の販売を始めました。品種名では、シェエラザード、ルシエルブルー、オデュッセイア、ダフネなどです。狭い日本の住宅事情や高温多湿にも強い品種で四季咲き性のカップ咲き、ロゼット咲き品種の育種を目指しました。 2019年からはサブブランド「ロサオリエンティス プログレッシオ」での販売を始めました。バラは普通の庭木よりも病気が出やすく、こまめに薬剤散布しないと育たない花です。秋の季節に、一般のご家庭のガーデンを眺めていると、他の草花や木々が普通に咲いているのにバラだけ葉を落としている姿がありました。 バラは美しくて香りがいいのに、このままでは廃れていってしまう。薬剤散布を少なくして、無農薬でも育てられるようなバラに変えていかなければと考え、耐病性を圧倒的に向上させて、美しさや香りと耐病性を共存させたいと思い、バラの育種に力を注ぎました。 2019年に淡いピンク色のシャリマー、赤色のマイローズで耐病性が強い美しいバラを出しました。バラの場合、ピンクと赤は比較的、耐病性が共存しやすい色です。一昔前は茶色の花は樹勢も耐病性も弱い品種がほとんどでしたが、2024年の春に出した「ルクソール」や、同年秋に出した「葵の上」は耐病性が高いです。これまで、私が育種した品種は恐らく、120品種ぐらいだと思います。ロサオリエンティスでも100品種以上はあると思います。