“言えない・気づけない”教師から生徒への性暴力。加害教師の「性的グルーミング」を克明に描く漫画『言えないことをしたのは誰?』は全国の学校に置くべき一冊
卑劣で巧妙な加害教師の「性的グルーミング」
作中では、加害教師の「性的グルーミング」(性的な行為を目的に子どもを手なずけること)の手口が克明に描かれるのですが、「二人だけの秘密」と言って他の人に関係を話さないようにさせ、被害生徒に「先生から信頼されている」「自分は特別な存在」「自分も望んだこと」で、その関係が“対等な恋愛”だ、と思い込ませる。さらに、教師がその行動に出るのは、被害生徒に原因があるのだ、と思い込ませる。 また、日頃は紳士的で誠実な振る舞いをすることにより、周囲に「まさかあの人がそんなことをするはずがない」と印象付け、外堀を埋めていきます。それによって、被害者の側に立つ他者をも孤立させるのです。 実際に起きた事件で、加害者が性暴力ではなく、恋愛だ、と主張するケースがあります。 フリーライターの高橋ユキ氏のレポートによると、女児の写真や動画が保存されたスマートフォンが見つかり、2022年に児童買春・児童ポルノ禁止法違反で逮捕起訴された小学校教師は、「私はAさんをレイプなんてしていません。当時Aさんとは交際をしていました」(弁護士ドットコムニュース「児童に性的暴行、小学校教師が「両思いになり交際していた」 被害者は「消えて欲しい」と怒り」)と主張したといいます。
「周囲の反応」が被害者生徒を追い詰めていく
また、たとえ被害を訴え出たり、事実が明るみに出ても、周囲の“二次加害”も深刻な問題です。性暴力にあった女性に対して、 被害女性側にも隙があったのではないか。 抵抗しなかったのは同意があったからではないのか。 自分から誘う素振りがあったのではないか。 虚言なのではないか。 そんな周囲の偏見や決めつけが、被害女性を追い詰め、声を上げられない状況に追い込んでいきます。本作に登場する被害生徒も、加害教師からの刷り込みだけではなく、周囲の反応によって「自分にも落ち度があった」「自分が悪かった」と思い込まされていきます。 実際に被害から20年経ってから教師からの性被害を自覚したという女性は、 「周りの人に『あれはわいせつ行為だったんじゃないかと思う』と言ったら、『なぜ今さら』という反応が9割で、あとは『好きだったんでしょう』『付き合ってたんでしょう』という反応が多くて」 「本当に従属させられていたというか。自分も(当時は)認識できていないから、言葉でうまく伝えられない。今だったら『恋愛と思わされていた』とか一言で言えるんですけど」 (日テレNEWS「教員から…気付けなかった性被害 20年が過ぎ「普通の恋愛と違った」 きょう“日本版DBS”審議入り」)と証言しています。