「私が絶対に食べないものと毎日飲むもの」米寿の現役医師が「健康長寿の極意」を語る
特別なことはしていない
今年88歳の米寿を迎えましたが、いまでも現役の医師として患者さんを診ています。こう元気でいると、よく「何に気をつけているのですか?」と聞かれますが、特別なことをしているわけではありません。 むしろ、ここ40年、私には休肝日がありません(笑)。一番好きなのは生ビール。夕食の際は、必ず中ジョッキを2杯いただく。その後で、焼酎やウイスキーのロックなどを3杯ほど。これが健康にちょうどいいんです。 こう語る帯津三敬病院名誉院長で医師の帯津良一氏は、これまで大病にかかったことはなく、若い頃に盲腸の手術をしたのみ。いまでも毎日病院で診察をする「スーパードクター」である。 専門はがん治療で、自身が院長を務める病院の患者の大半はがん患者。日頃、「死」に向き合っていることから、人生について達観した考えを持っている―。 本誌記者はそんな帯津氏に「長寿の秘訣」を聞くべく、埼玉県川越市にある病院を訪問すると、氏自らが玄関まで出迎えてくれた。足取りは軽く、快活に話しながら院内を案内してくれる。さっそく普段の食事から聞いてみた。
生野菜は絶対に食べない
食事において、腹八分目は基本です。ただし、栄養のバランスを気にしないことですね。多くの量でなければ、好きなものを食べていいでしょう。 私は、できるだけ毎日牛肉を食べるようにしています。牛肉は高タンパクで、筋肉づくりに必要なアミノ酸などの成分を豊富に含んでいます。そのため、筋肉の老化を抑えられ、丈夫な身体を保てる。分厚いステーキは食べにくいので、薄切りにして、すき焼きで食べることが多いですね。 もう一つ、意識して摂っているのが、骨を強くするためのカルシウムです。ただ、カルシウムは体内に吸収されにくいので、効率よく吸収できる食材から摂るのがいい。 カルシウムが1に対してリンが2の食材は吸収効率がいいとされています。そこで私が選んだのは昆布。毎晩の酒の肴に昆布でだしをとった湯豆腐を。昆布も食べるようにしています。だし汁もウイスキーのチェイサーとして飲んでいますよ。 一方、生野菜は食べたことすらありません。レストランで出てきても絶対に食べません。私は戦前の生まれですが、幼い頃、生野菜が食卓に並ぶことはありませんでした。漬物は食べますが、生の野菜を食べる習慣がないんです。無理して食べなくても死ぬわけではありません(笑)。 帯津氏が食事以外で意識しているのが「今日が最後の一日だ」と思って生きることだ。映画『おくりびと』の原点となった作家・青木新門の『納棺夫日記』の一節をつねに心に刻んでいるという。 私の病院には病床数が99ありますが、4分の3はがん患者で、末期がんの方も多い。死とどう向き合えばいいのか―。そう思い悩んでいたときに青木新門さんの本にあった「死の不安におののく末期患者に安心を与えることができるのは、その患者より死に近いところに立つ人」という言葉に感銘を受けたのです。 以来、その境地に立つべく、私自身が「今日が最後だと思って生きる」と決めました。「これが最後の晩酌になるかもしれない」。そう思ってお酒を飲んでいると、皆への感謝の気持ちが芽生え、それでいて今この瞬間を楽しむ気持ちも湧いてくるものです。