遺贈寄付は人生最後の社会貢献 望む未来や社会の姿を選び取って後世へ
震災時の寄付経験、クラファンのブームも後押し
――日本における遺贈寄付の現状について。認知度や寄付件数は増加傾向にあるのでしょうか。 NPO法人 全国こども食堂支援センター・むすびえが実施した「第2回遺贈寄付に関する実態調査」によれば、遺贈寄付の認知度は全体で70.4%と、第1回調査の67.4%から増加。遺贈寄付の意向がある人の割合も全体で7.6%から10.0%になり、認知・意向ともに上昇していることがわかります(第1回調査の調査対象者は50~70代のため、50代以上で比較)。 遺贈寄付の件数も、NPO法人セイエンが国税庁に開示請求して得たデータを見ると、増加傾向にあると言えます。 ――震災やクラウドファンディングの普及なども後押しているのでしょうか? そうかもしれませんね。遺贈寄付は、「寄付をしたことがある」という経験をすることが大きなハードルを下げることがわかっています。東日本大震災が発生した2011年は、災害支援の個人の寄付総額が大幅に増加し、日本人の寄付への意識が変わった「寄付元年」とも呼ばれています。クラウドファンディングによって寄付に対する抵抗感が下がってきたことも一因かもしれません。
おひとりさまの遺贈に多い「包括遺贈」に注意
――寄付先はどのように選べば良いでしょうか。信頼できる寄付先を見分ける方法はありますか。 まずは、気になる公益団体・法人のホームページを見て、遺贈寄付を受け付けているか確認しましょう。遺贈寄付パンフレットなどの資料を取り寄せて、活動内容や寄付金の使途を見定めることも重要です。一度、少額でお試し寄付をするのもおすすめです。お礼状やイベントの招待が送られてくることもあるので、そこで相性を見極めるのも一つの手です。 ――遺贈をする際のポイントや注意点すべき点を教えてください。 相続人が全くいない方は包括遺贈を検討することもあると思いますが、包括遺贈を受ける団体が少ないので注意が必要です。これは、民法の規定で「包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する」とされているためです。つまり、包括遺贈者は「プラスの財産もマイナスの財産(債務)も引き継ぐ」ことになる。「財産の2分の1を包括遺贈する」のであれば、借金の2分の1も承継することになってしまい、プラスの財産よりもマイナスの財産の方が多い場合も考えられるので、遺贈寄付を受け取る非営利団体にとってはリスクになってしまう。包括遺贈で遺言を書く場合は、事前にその団体に相談しましょう。 もう一つは不動産遺贈です。不動産は売却できない可能性があるため不動産の寄付は受け付けていない団体が多いです。また、無償で遺贈して譲渡所得がなくても、事実上あったとみなされる「みなし譲渡課税」の問題もあります。これは、法人に不動産を遺贈した場合、実際には売買がなされていないのに譲渡があったとみなし、含み益に対して課税される制度です。この税金を負担するのは遺贈を受けるNPO法人ではなく寄付した側、すなわち遺贈者の相続人(子どもなど)であることに注意が必要です。これを回避する方法としては、遺言書に「この遺贈の負担として、みなし譲渡所得税は受遺者が支払うものとする」と書くなどの方法があります。