W杯アジア最終予選サウジ、豪州戦のカギを握るDF冨安健洋のアーセナル仕込み「メンタリティー」と「ボックス内勝負」
指揮を執って3シーズン目になるスペイン出身のクラブOB、ミケル・アルテタ監督の解任論が飛び交う状況でアーセナル入りした心境を冨安はこう振り返った。 「最初の3試合に関して僕はいなかったので、チームの雰囲気がどうだったのかは正直わかりません。ただ、チームの状況どうこうよりも新加入選手として、自分の価値をチームメイトやサポーターを含めたクラブの人間に証明しなければいけない状態だったので、僕を取り巻くいろいろな環境もありましたけど、それでも自分のことに集中して、あまり考えすぎないようにプレーしようとこの1ヵ月間は意識してきました」 デビューは国際Aマッチデーウイーク後の9月11日。ノリッジ・シティとの第4節で右サイドバックとして先発した冨安は、後半18分までプレーして零封に貢献。チームも4試合目にして今シーズン初ゴールをあげて、同じく初勝利をあげた。 第5節以降も右サイドバックに定着した冨安の評価を一気に急上昇させたのは9月26日のトッテナム・ホットスパーとの第6節だった。ともにロンドン北部を本拠地とする宿敵との歴史あるダービーで、冨安は3-1の快勝に大きく貢献した。 16回訪れた空中戦で14回もの勝利を収め、デュエルでの勝率が76%に達した冨安は、ファン・サポーターが選ぶマン・オブ・ザ・マッチにも選出された。瞬く間にアーセナルに受け入れられても、冨安は「まだまだです」とこう続ける。 「まだ4試合を終えただけですし、自分のなかでここが通用する、ここが武器だという感覚は正直まだないですね。1試合1試合戦っていくなかで課題を感じながら改善して、それを継続させながら成長につなげていく必要があると思っているので」 アーセナルと森保ジャパンとで、冨安はくしくも同じ状況を経験している。それは自身がいない状況で、ファン・サポーターの激しい批判を浴びる黒星を喫したことだ。 終了間際の失点でオマーンに白星を献上した9月2日の初戦で、冨安の姿は市立吹田サッカースタジアムのピッチになかった。期限ぎりぎりで移籍が成立しそうな状況下で日本サッカー協会に相談し、帰国および合流を免除されていた。 「ヨーロッパに残らせてもらったことに関して、日本サッカー協会と(森保一)監督には本当に感謝しています。それがなかったら、移籍できていなかったので」 オマーン戦欠場をこう振り返った冨安は、アーセナルとの契約を終えた後にひと足先にドーハへ入り、ショックを引きずりながら日本から移動してきたチームメイトたちを出迎えた。先発に復帰した中国戦は1-0で勝利したが、必要以上に日本をリスペクトし、守備を固めてきた中国に自陣のゴールを脅かされる場面はなかった。 しかし、来たるサウジアラビア戦は違うだろうと冨安が記憶を紐解く。 「アジアカップで対戦したときの印象で言うのであれば、サウジアラビアにかなりボールを支配されて、僕たちが押し込まれる展開のなかで勝利したので」