競馬は景気のバロメーター?「2024年JRA売上高」に見る日本経済の現在地【解説:エコノミスト宅森昭吉氏】
競馬というエンターテイメントも社会経済と密接に関わっているようです。競馬の売上高を経済指標の一つとして捉えると、景気動向との意外な関連性が見えてきて……。本稿では、景気の予告信号灯として「JRA売得金」を取り上げ、日本経済の現状について、エコノミスト・宅森昭吉氏が解説していきます。 【早見表】毎月1万円を積み立て「預金」と「NISA」を比較…5年~40年でどれくらい差がつくか
JRA売得金は13年連続増加
JRA売得金・前年比と名目GDP・前年比の平成・令和の34年間(平成元年・1989年~令和5年・2023年)での相関係数は0.71と、12月9日に改定されたGDP統計を使用した計算でも高い数字になっています。景気がよく収入が伸び、懐具合がいいときは競馬の売得金も伸びるようです。24年のJRA売得金は3兆3,134億9,707万600円で、前年比は+1.2%と13年連続増加になりました。緩やかながら景気拡張局面が続いていたことと整合的な数字といえそうです。 G1レースの売上高…年間を通してもたついていたが、年末にかけて回復傾向を見せる 24年前半のG1レースの売得金・前年比は全12レース中、4レースが増加、8レースが減少となりました。23年後半のG1レースの売得金・前年比が全12レース中、8レースが増加、4レースが減少だったので、24年前半のG1レースの売得金・前年比はちょうど逆で、悪いほうの結果になりました。24年3レース目の3月末の大阪杯が初の減少となり、続く4月は3レースすべてで減少。5月は4レース中、増加と減少が2レースずつになったものの、6月の2レースは減少と、パッとしない内容になりました。 24年後半のG1レースの売得金・前年比は全12レース中、6レースが増加、6レースが減少となりました。9月29日のスプリンターズステークスこそ前年比増加でしたが、続く10月13日の秋華賞から11月24日のジャパンカップまで10月・11月の6レースはすべてで前年比減少となりました。ところが12月に入ると12月1日のチャンピオンズカップから前年比増加に転じ12月28日のホープフルステークスまで5レース連続で増加となりました。 その結果、24年のG1レースの売得金・前年比は全24レース中、10レースが増加、14レースが減少とパッとしない内容になりました。ただし、最後の5レースの連続増加が、いい流れで25年へつながるという期待が持てる内容でした。 24年JRA売得金・年初からの累計前年比 24年のJRA売得金・年初からの累計前年比は、プラス基調は維持してきたものの年初から伸び率が6月初めまで鈍化傾向で、6月2日時点・6月9日時点では連続して+0.4%と今年になっての最低の伸び率になり、もたつきが感じられました。しかし、そこから徐々に持ち直し、9月29日までの年初からの累計前年比はいったん+1.6%まで戻しました。 しかし、10月・11月の年初からの累計前年比は再びもたつき+0.8%~+1.2%の間で推移しました。12月は15日まで年初からの累計前年比は3週連続+0.8%でしたが、22日までで+0.9%、28日の最終日までで+1.2%と持ち直して終わりました。 最終的に24年の前年比は、紆余曲折はあったものの、+1.2%と13年連続前年比増加になりました。