「俺が市議選に出る!」プロの世界で挫折を味わった“元浦和レッズ戦士”はいかにして政治家へと転身したのか。「なんでもトライしたい性分なので」【波瀾万丈物語】
次点と32票差での最下位当選。「さあやるぞという覚悟を決めました」
4月23日の投票日まで準備期間は極めて短い。選挙の手引書を読みあさり、自治会長を紹介してもらい、サッカースクールの保護者や越谷西高校の卒業生らに活動の輪を広げてもらった。3つの駅前を中心に早朝5時半からビラを配りながら、政策の2本柱にした子育てとスポーツ環境の整備を訴え続けた。「手応えは悪くないと思いました」。 32人の定数に47人が立候補。即日開票されたが、当落はなかなか見えてこない。深夜2時半過ぎ、選挙管理委員会から吉報が届いた。32番目の最下位当選で、次点とは何と32票差だった。「連絡がきたときは、ただほっとしただけでしたが、翌日に当選証書と議員バッジを受け取ったら実感がわき、さあやるぞという覚悟を決めました」と引き締まった表情で当時を思い返した。 この1年半、市民の代表として市に対してさまざまな政策を提言。しらこばと運動公園の改善、子育てや教員のハラスメントなどの調査を議会で発言するほか、市の担当所轄課に市民からの陳情などを投げ掛ける。 同運動公園の照明について市民としての訴えは実らなかったが、市議の立場で市側に尋ねると「可能だと思うので対応させていただきます」との答えが返ってきた。現在同運動公園第2競技場は土のグラウンドだが、人工芝に移行する施策も進行中だ。「担当課長さんが前向きに検討すると述べ、来年度予算に組み込まれる可能性があります」と喜ぶ。 教員の働き方改革では、中学校部活動の地域移行などについても知恵を絞っているという。 「私たちは越谷市民の代表ですから、市民が暮らしやすい環境づくり、越谷に住んで良かったと思える街づくりを進めるのが使命。この信条と心得を忘れずにまい進したい」 “1年生議員”は熱き思いを込めてこう宣言した。 昨年、2級建築士の免許を取った。リフォームなどを請け負いながら、1級建築士を目ざして勉強中だ。15歳の時の夢を捨ててはいなかった。 (文中敬称略/表記は当時のもの) 取材・文●河野 正