「つまらん人生でした」…戦後、子どもたちに「戦犯」と呼ばれ石を投げられた「零戦搭乗員」が晩年に語った「意外な本音」
“進藤三郎”の最期
平成12(2000)年2月2日の午後、進藤は、いつも午睡をしていたソファに座ったまま、眠るように息を引きとった。その顔はおだやかで、微笑んでいるようにさえ見えたという。享年88、大往生といえるのかもしれない。 進藤に、これまでの人生を振り返っての感慨をたずねてみたことがある。進藤は即座に、 「空しい人生だったように思いますね」 と答えた。 「戦争中は誠心誠意働いて、真剣に戦って、そのことにいささかの悔いもありませんが、一生懸命やってきたことが戦後、馬鹿みたいに言われてきて。つまらん人生でしたね……」 予期せぬ答えに、この言葉をどう受け止めるべきなのか、戸惑いを感じたことを昨日のことのように憶えている。おそらくこれが、国のため、日本国民のためと信じて全力で戦い、その挙句に石を投げられた元軍人たちの本音だったのかもしれない。 ――進藤が亡くなって24年が過ぎたが、この言葉はずっと、私の胸に棘のように刺さったままだ。
神立 尚紀(カメラマン・ノンフィクション作家)